戦で培った錬金術を、火加減と塩梅で組み直す——この発想がまず新鮮。
引退した天才錬金術師リリアが港町で開いた小さな食堂は、ただおいしいだけの店ではありません。香りの立ち上がり、温度差で作る層…理屈と手仕事がぴたりと噛み合う調理描写に毎話ワクワクします。
天性の嗅覚・味覚の持ち主カイ、寡黙な衛兵ヨナ、港町の様々な人たち——人の体温がテーブル越しに伝わる群像も魅力。小さな困りごとや市場のトラブルを、“レシピと論理”でほどいていくカタルシスが心地よく、後半のレシピを試したくなります。
家族・お仕事・ごはん、そしてほのかな恋。やさしさと知性のバランスが絶妙な、“居場所”の物語です。