小鬼の膿む眼窩

花野井あす

phantom pain


 わたしの目には、子鬼こおにが住んでいる。


 眼球をうしなって空っぽになった眼窩。そのなかには常にもぞもぞと子鬼こおにはうごめき、時おりコツコツと眼窩を叩いて、それからケタケタと嗤う。

 

 そのたびに疼いてたまらない。

 

 うしなわれた眼球のが痒くてたまらない。

 

 痒くて痒くて、ひたいから頬にかけてバリバリ、バリバリと掻きむしるけれど、子鬼こおにはやめない。爪が皮膚を破って血が滲んでも、子鬼こおにはケタケタ嗤いをやめず、またコツコツと眼窩を叩いて眼球の裏をもぞもぞ、疼かせる。


 あゝ、気がどうにかなりそうだ。


 わたしは子鬼こおにを追っ払って、眼球の裏を掻きむしろうとする。

 

 バリバリ、バリバリ

 グシャグシャ、グシャグシャ


 血が滲むとまた、小鬼はケタケタと嗤って、眼球の裏をもぞもぞさせて、わたしは終わりのない疼きに顔の肉をむしって削ぐのだ。

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小鬼の膿む眼窩 花野井あす @asu_hana

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