第41話 島を見送る二人……

「何だか、寂しい客船になりましたね」

 帰りに戻っている中、甲板から遠くなっていく。自分たちが先程いた離れ小島を眺めていた真に、つむぎが言った。

「まあね。みんな疲れてるっていうのもあるんだけど、荒木葉子が犯した黒歴史をほとんどの占い師がみんな黙っていたことが明るみに出てしまったから、部屋にこもってるからね」

 真は一番近くに接してくれた占い師、玉葉も「疲れてるから、休ませてもらうわ」と言って、部屋に入っている。

 あれだけはしゃいでいた小春は、事件のショックから部屋から出ないし、能美も今は小春に近づこうとも思わないだろう。

「何だか、助けられなかったことが一番ショックだったな」

 そう呟いているつむぎに対して、真は言った。

「まあ、僕はあかねさんと色々事件を解決して、逃げられたり捕まったりしたけど、今回ばかりは胸が痛いよ」

「真さん、これ持って帰ってきちゃいました」

 つむぎはポシェットから、くるみが使っていたクマの絵が着いてあるメモ帳を取り出した。

「あ、それは、くるみさんのじゃなかったっけ?」

 すると、つむぎは笑った。「そうですよ。何だかくるみさんが生きてたら、もっと仲良くできたし、せめて何か形見になるものでもと思って……」

 つむぎがメモ帳を胸に抱えている姿を見ると、真は頷いた。「くるみさんもきっと嬉しがってると思うよ」

「えへへ」と、つむぎは笑いながら、またメモ帳をポシェットの中にしまった。

 相変わらず、風がきついので長髪のつむぎはなびく髪を手で抑えながら、思い出したように言った。

「……あ、そういえば、あの日本酒もう酔いが醒めてるんですか?」

「まあ、醒めてるよ。あの日本酒があれば今日の難事件も解決できるね。後で、中田さんにどこで買ったか教えてもらおう」

「依存症にならないでくださいね。酔うと真さん、ちょっと乱暴に言うから」

 つむぎは真が“つむぎ”と言ったことに、まだ根に持っていた。しかし、同時に少しドキッとして思わずはにかむ。

「どうゆう事?」

 真は大体のことは覚えているが、その事に対しては思い出せない。

「別に関係ないです。でも、酔って乱暴になった真さんに、お姉ちゃんは何ていうかな……」

 そう言われて、真は想像した。

 ——きっと、引っぱたかれるな。いや、もしかしたらあかねさんも同じように飲むのかもしれない……。

 その時、あかねがいる笹井探偵事務所では、彼女は携帯ゲームを手に持ちながら、大きなくしゃみをしていた。

「……誰か、噂してるのかな」

 そう言いながら、思い切り鼻をすするあかねであった。

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真、旅の記録 占い師殺人事件 つよし @tora0328TORA

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