第32話 新宮にて
現帝の宮は、白い菊の花が庭いっぱいに植えられていることから「
日ノ出の宮は、
妾は、日ノ出の宮で射流鹿を待っている。
射流鹿は、イルドラでの戦いを
とは言え、太后様には月夜見様が伝えているし、帝にも伝わっているはず。
射流鹿は、イルドラ王の遺体を「野盗の死体」として扱い、敵国の王族として敬意ある処遇をしなかった。羅睺羅の元老院ではそれを批難する議員がいたが、その日のうちに叛逆の罪で逮捕された。
射流鹿は直ぐに現れた。太后様から「
妾は完成するまでの間に何度か様子を見に来たが、射流鹿がこの新宮に入るのは今日が始めてだ。取り敢えず、広間に2人で向かい合って座わることにする。
「ふつつか者ですが、宜しくお願いします」
三つ指をついて頭を下げる。本気で自分を「ふつつか」とは思っていないが、これも儀式の一つである。
「本当に……いいんですか」
射流鹿の返事が何故か煮え切らない。折角の儀式が中断させられそうだ。
「何よ、今更。良いも悪いもないでしょうが!」
「僕の選択は、まつ
射流鹿は申し訳なさそうに目を伏せた。一応「気にしてくれていた」のがわかり、妾はむしろ嬉しくなった。
「わかってないなあ」
恥ずかしいけれど、仕方がない。ある種の鈍感男には、言葉にしないと通じないこともある。
「妾はね、あなたのものなんだよ。だから、あなたの好きなようにしていいの。遠慮も謝罪も要らないよ」
妾の言葉に、射流鹿は少し驚いた顔をした。それから、両手をついて頭を下げる。
「ありがとうございます」
「うん。よろしい」
若干横道に逸れたが、儀式は滞りなく進んでいることにしよう。
日嗣皇子に嫁ぎます ー神々の遺産ー 星羽昴 @subaru_binarystar
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