第43話 発情期エンド



 ユハ兄さんの後ろに隠れれば、真緒くんのことならなんとかしてくれると思った。

 しかし、ヒバリくんはなぜか笑っていて、僕の恐怖を上書きするように、マオくんが大きな口を開いて、あるモノを食べてしまう場面を見てしまった。



「ヒッ……マ、マオくん」



 あっという間だった。

 本当に何もかもがあっという間で、チャリオット国が目の前で滅んでしまったのだ。

 圧倒的な力の差があり、数ではどうしようもない相手がいるのだと理解した瞬間だった。

 だが、それと同時に癒し系のマオくんが戦う姿は、僕の理想のワルワルであり、それ以上の存在であるヒバリくんは、いったいどのような戦い方をするのだろうと、ドキドキしながら現実逃避をしてしまった。



「――ユルは向こうの世界の生神だよ。あの世界には生神が多くいたけれど、鶴の生神だったユルは人の生活に憧れ、生まれ変わって柚鶴として生きていた。けれど、ユルにはその記憶がない。生まれ変われば記憶は失われるものだけど、ユルが生神である事は変わらず、人を惹きつけ、過去を変え続けた」



「それは、仮にも神であるユルが、世界に干渉した事になる。神の許可はあったのかい?」



「あるわけがない。けれど、ユルはそんな事を知らないし、神もどうしていいか分からなかったようだからね。私は愛してやまないユルをひきとって、この世界の生神になってもらおうと思ったんだよ」



 僕の話をしてるの?ヒバリくん、その人は誰?もしかして神様?



「だからと言って、ユルの発情期がきた途端に、生神になった祝いをされても困る」



「発情期と信仰心で生神になるとは思わなくてね。ユルに話しかけたくなってしまったんだよ」



 僕が生神?というか、発情期に入ったなら、早くヒバリくんと繋がりたい!



「神様、後にして。僕のヒバリくんを返して」



 そうして目が覚めれば、ヒバリくんは驚いた表情の後、嬉しそうに僕に口づけをしてくる。



「ユル、いい匂い。愛してる……愛しい俺のツガイ」



「僕も愛してる。ヒバリくん……酷くして」



 自分が何を口走ったかも理解しないまま、僕は発情期を迎えてしまい、ヒバリくんは狂ったように僕を抱き続けた。

 僕の魔力が発散されても、また発情してはヒバリくんを求め、ヒバリくんも僕を求めてくる。

 言葉などなくとも、僕に発情して愛してくれるヒバリくん。

 幸せでありながらも、体は悲鳴をあげる発情期は、ひと月以上も続き、発情期が終わってすぐ、僕は――



「ユル!勝手に巣から出るな」



「嫌だ。僕だって自由が欲しい!推し活だってしたい!」



 僕は元気良く巣から飛び出し、そんな僕を追ってくるヒバリくん。

 そして僕達の様子を見ながら笑っている群れと、僕の推し達。

 前世では想像ができない光景だが、それでも僕は今日も元気に推し活中だ――






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糸目推しは転生先でも推し活をしたい 翠雲花 @_NACHI_

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