【下】超魔法使いと魔道書

~諸事情により、辿り着くまでの冒険譚は省略~



超大魔法使いは、ぐでんぐでんだった。


「酒もってこい!」


と酒が大量に振っているにも関わらず、超大魔法使いは叫んでいた。



「超大魔法使いが酒に溺れているなんて、落ちぶれたものね。レベル1のわたしにとっては、わたしにとっては雲の上のような存在だったのに」


「何があったんだろう?」



超魔法使いの家は荒れていた。


「この様子だと、魔に心を冒されたってとこかな」


「そんな事ってあるんだ」


「【魔】法だからね。簡単に凶器になるの、きっとそれを酒で誤魔化そうとしたのかも」


「そうなんだ」


「ねえねえ、勇者キート見て見て!」


チナミは、美酒に関する魔術書を見つけてきた。


「これがあれば永遠に美酒を作り続けて、わたしたち大金持ちになれるよ」



貧しい美少女魔法使いは、はしゃぐんだけども、


「この大洪酒を止める為に、ぼくらは来たんだよ」


「可愛いだけが取り柄のわたしレベルの魔法使いが、止められる魔法じゃないし」



そりゃそうだ。そんな魔法が使えたら、こんなに貧しくはない。


それにしても【可愛いだけが取り柄】とか自分で言うか?


可愛いけども。



「でもさ、こんなに大量に降ってるから、いくら美酒だって高くは売れないよ」


「う~ん、そうだわたしの家に代々伝わる特殊魔法がある」


「なに?」


「魔術書の偽造よ」



ちなみにチナミの家は、盗賊団家系だ。


未だに村の人は知らない秘密だ。



「いいの?」


「こんなアル中の大魔法使いは、気づかないし、もう気づけない」



美少女魔法使いはそう言うと、巧妙に魔術書の呪文を書き換えた。



「書き換えるとどうなるの?」


「解らない」


「そんな無責任な」


「大丈夫、わたしは可愛いだけが取り柄の魔法使い。可愛いは正義。なんとかなるよ」



そして、可愛いだけが取り柄の魔法使いは言った。


そしてその可愛らしい声で、超大魔法使いの耳元で囁いた。



「超大魔法使い様!再び呪文を唱えれば、酒を持ってくる事が出来ます!」


「なんと、そうか、魔法切れかえーと、そこの魔道書を取ってきてくれないか?」


「すぐに」



酔っぱらいの超大魔法使いは、巧妙に偽造された呪文を唱えた。


泥酔状態な上、可愛いだけの取り柄の少女の、可愛らしい視線に、偽造された事に気づくことはなかったらしい。



幼馴染のぼくすら、未だにチナミの可愛い視線を受けると、困惑してしまう。



超魔法使いが呪文を唱えると、降り注いでいた美酒は清らかな水へと姿を変えた。



清らかな水は、大地を洗い流し、元の世界、いや元の世界より清らかな世界が、そこに出現した。



「酒じゃないじゃないか!」


超大魔法使いは怒り狂ったが、所詮、アル中。


動きは遅かった。



チナミは超魔法使いの魔道書を、リュックにしまうと、


「キート!逃げるよ!」



こうしてぼくとチナミは、美酒を作り続け、裕福な暮らしを手に入れることが出来た。





          完

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ちなみにチナミの家は、盗賊団家系 五木史人 @ituki-siso

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