第7話 こころ先輩のホンネおしゃべり

(ちゃぷ、ちゃぷ……)


「今日も部活動は楽しかったです」


「あなたが来てから、部活はいつも楽しいですよ」


「これまでずっとひとりで部活をしていましたから」


(ちゃぷ、ちゃぷ)


「毎日、わたしとおしゃべりをしてくださって」


「とても新鮮で、幸せです」


「……なにもかもが初めてで」


「後輩ができることも、一緒にいてくれる方も」


「……そうですね。わたしの家族はいつも仕事や学業で忙しそうですし」


「教室でも、わたしは普段、人と話しませんので」


「わたしの声さえ知らないクラスメイトが、たくさんいると思います」


「もったいない、ですか?」


「そう、でしょうか。意識したことはありませんが」


(ちゃぷ……)


「……確かに、会話を増やせば友達もできそうです」


「水泳部も、ひとが増えるかもしれませんが」


「でも、それは……」


「まだ先のことと言いますか」


「いまは」


「わたしとあなたのふたりだけでも、いいと思います」


「ふたりが、楽しいので」


(ちゃぷん)


「……そうですとも……」


「わたしの声は、あなただけが聴いて」


「あなただけが知っていたら、それでいいのですから」


「あなたがわたしをひとりじめにしてくれたら、わたしは嬉しいです」


(ちゃぷ、ちゃぷ、ちゃぷん)


「わたしも……」


「あなたを、ひとりじめにしたいので……」


(ちゃぷん、ちゃぷん)


「もうすぐ陽が落ちますね」


「今日の部活動はこれで終わりにしましょう」


「お疲れさまでした」


「あしたも、またこのプールでお会いしましょう」


「いっぱい、まだ、いっぱい」


「やっていないことがありますので」


「あなたといっしょに、行いたい」


「あなたが分からないことならば……」


「わたしが」


「ちゃんと」


「教えてさしあげます」(至近距離)


(ちゃぷん……)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

水泳部のダウナーなお嬢様先輩、汐見こころのあまあま水泳指導 〜わたしが教えてさしあげます〜 須崎正太郎 @suzaki_shotaro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画