コロナになったので

高山しゅん

日記とか

 先月(2024年7月)COVID-19に罹患した。


 流行当初ならいざ知らず、5類に移行した今となっては別段珍しくもないし騒ぐようなことでもないんだろうけど、個人的にコロナにだけは絶対かかるまいと意気込んで対策をして、ここまで乗り切ってきただけにショックが大きかった。


 7月の頭くらいから、なんか最近また流行ってるらしいから気をつけてね、という話を職場で聞いてはいたのだが、ふーんまあ今までも平気だったし、大丈夫でしょと甘く見ていたところに直撃した形である。

 奇しくも6月頃から、職場でのマスク解禁となったところであった。さすがに暑いから今年は外すかーと油断したばかりにまんまと流行りに乗ってしまったのは(それが原因かどうかは分からないが)だいぶ恥ずかしい気持ちだ。


 さて、そんな訳でコロナってしまった訳だが、当時の自分は、せっかくコロナになったのなら、転んでタダで起きるのは癪だから何か記録をつけておこうと、クッソ具合が悪いにもかかわらず日記をつけていた。もったいない、という実に日本人的な気持ちである。寝ろ。




【伏線】

 症状が出たのは7/24なのだが、実は7/15頃から謎の軽い頭痛が続いていた。熱中症かな? と思って体を冷やしたりしてみたものの、特に良くも悪くもならなかったので、結局関係あったのかどうかは分からず。

 症状が出た時にこの頭痛が出番だぜとばかりに前面に飛び出してきたので、もしかしたら伏線だったのかもしれないな、といったところ。

 ただ、調べてみると潜伏期間は長くとも5日程度。一週間以上前からちょっとした症状だけが出続けるものなのかどうか? 今となっては闇の中である。


【7/24】

 朝起きると喉の痛み。いわゆる風邪の時に感じるやつで、暑さのせいで体を冷やしすぎて夏風邪引いちまったかなと思っていた。

 仕事中だんだん痛みの範囲が広がっていくものの、やがてマシになる。全体的に痛みが通り過ぎていった感じ。

 夜、なんかやけに冷房が寒く感じられる。今思えばこの時既に発熱していたのかもしれないが、発熱自体にあまり縁のない生活をしていたため、体温を測ることもなく、結局どうだったのかは分からず。


【7/25】

 朝、全身が痛い。食欲がなかったが無理やり朝食を食べる。

 inバーウェファー抹茶と糖質控えめドーナツ。甘いものばっかだな。でもこれくらいしか食べる気になれなかった。そしてどちらも一口食べるだけでめちゃくちゃ不味く感じられ、口にいれるのが苦痛だったが、無理やり詰め込む。

 食べた後は頭の痛みがマシになった。

 今思えばこの時点で医者に行けば良かったんだけど、その時はなぜかそんな考えは全く浮かばなかった。

 昼食として買ったたこ焼きがめちゃくちゃ不味く、苦しむ。

 仕事中は明らかにメンタルが死んでおり、近所でやっていた夏祭りで子供がはしゃぐ声に苛立つなどする。


【7/26】

 休日。やっとだ。

 まだこの時は、今日一日休めば回復すると思っていた。楽観的すぎる。

 咳はあまり出ないが、気管が狭まっている感覚があった。むせるような感じ。

 そして39度近い発熱。

 鼻が死んで匂いがほとんどわからない。

 昼食:作り置きしてあった鶏むね肉とズッキーニのなんか甘酢漬けっぽいやつ。あまり美味しくない。

 夕食:納豆&うにみたいな豆腐。以前試して美味しかった組み合わせだが、これがびっくりするほど不味い。最悪のチョイス。今後しばらくの間はこの組み合わせは試さないだろう。数口食べただけでギブアップという気持ちになるが、もったいないおばけなので意地で全部食べる。

 食事を口にするとすぐ気持ち悪くなってあまり食べられないくせに、空腹の苦痛は感じる。

 横になっても思考が空回りして眠れず、しかし起きていても何もできない。

 高熱のせいだろうか、医者に行くとか、職場に電話するとか、そういう常識的な思考が一切抜け落ちていた。とにかく死体のようにじっと横たわっている。Lofi Girlのpianoをひたすら聞きながら。

 暑いのに汗が出ない。汗だくよりは不快感がなくていいと思ったが、体が高熱を維持するために汗を出していないだけだなこれは。このまま寝たら死ぬかも知れないと思い、氷枕で頭を冷やし、首筋に保冷剤を当てる。


【7/27】

 朝、熱が37度くらいまで下がり、常識的な思考が戻る。これはダメですね。

 職場に電話。喋ろうとすると自分の声が怪獣みたいになってて若干ウケる。相手は聞き取りにくくてたまったものじゃないだろう。

 その次にかかりつけの医者に電話し、診察の予定を取り付ける。「風邪の症状が出ていて……」と丸めた新聞紙みたいな声で言うと、「そんな声してますねえ」と言われる。慣れた感じの対応に若干心が軽くなる。

 その後、指定された時間に医者へ。裏口の扉から直でカーテンで隔離された臨時の診察場所で診察を受ける。体温を測ると37.2度。平熱じゃなくてなぜかホッとする。

 鼻に長い棒をつっこまれる例のやつを初めて体験する。体の反射か何か知らないけど咳が勝手に出まくる。こりゃ診察する先生が一番危険だわ。

 それより何より一番キツかったのが、検査結果を待ってる間に急に右の二の腕が攣ったこと。全力で筋肉が収縮する痛みはお前誰の許可取って体動かしてんだコラと悪態をつくのもやむなしといった所業で、そのあまりの痛みに呼吸は激しく乱れ椅子の上でのたうち回り、この場面を先生とかスタッフの人に見られたら救急車呼ばれるなと思った。(ちなみにこの時攣った部分はけっこう筋肉が損傷したらしく、その後数週間は酷い筋肉痛みたいになっていた)

 そして痛みが収まった頃に告げられるコロナ陽性。踏んだり蹴ったりで負けた気分になる。(実際負けている)

 処方箋を出され、薬局へ向かう。医者ではあんなに厳重に隔離されてたのに、処方箋受付では一般客と同じ空間で待っている。これ大丈夫? 大丈夫じゃないよね。感染が広がる理由が分かる気がする。

 コロナ治療薬ゾコーバ、薬価7407.4円也。初日3錠まとめて飲み、その後は一日1錠で計5日、全部で7錠。他にも解熱剤やら漢方薬やらうがい薬やらトローチやらが出て合計金額16,670円(保険なしだと55,570円)

 うがい薬とトローチはいらねえな~と思う。(もう喉はほとんど痛くないため)

 薬をもらった後職場に電話。なんでもっと早く医者行かねえんだよとかそういう圧を言外に感じるが、まあ……その通りですね。すんません。自分も当事者じゃなかったら同じこと思ったと思う。

 とにかく今食べられそうなものを脈絡なく買い漁って帰宅。

 レトルトの梅粥に南高梅の梅干し入れたやつがクリティカルに美味く、世界で一番うまい食べ物がここに決定した。逆にこれならいけそうと思って買ったフルーツゼリーがベタつくような甘さで気持ち悪くて全然美味しくなかったのには驚いた。

 夜、暑さと空腹で眠れない。

 食べると気持ち悪いのに食べなきゃ空腹がキツいのはなんとかならないのか。


【7/28】

 解熱剤のおかげか、熱が36度台まで下がる。

 匂いは相変わらず全然分からない。

 どうでもいいけど解熱剤、汗をめちゃくちゃ出すことで気化熱により体温を下げるものだということを今更知る。そりゃそうか。飲むだけで不思議な力で体温が下がる訳ないよね。

 解熱剤と昼の暑さによってビタビタの汗まみれになり、敷布団のカバーに人の形がくっきりとできあがる。孤独死したら多分こんな感じになるんだろうなと思う。

 横になっているうちに、なぜか一休さんに対する苛立ちが募る。なにがとんちだよ屁理屈小僧坊主がよ……

 近所のスーパーに買い出しに行き、豚ロース肉などを買う。普通の食事をしないと空腹で色々ヤバい。肉体も精神も。

 豚しゃぶサラダ。匂いは分からないがうまい。普通に食える。ビーフジャーキーもなぜか買ったのでおやつに齧る。塩っ辛くてうまい。冷蔵保存しなきゃいけないんだこれ。へえ。

 アイスの実濃いぶどう、めちゃくちゃうまい。太古の昔にこれがあったら神の食べ物として崇め奉られていただろう。

 お茶漬けのもとは買わなくてよかったな。なんで買ったんだ? いつ作るんだこんなもん。家に3袋くらい残ってるし。

 熱は下がってもネットをざっと眺めているだけで辛くなってきて、結局横になる他ない。キングストンのラジオもいいけどやっぱLofiが何も考えなくていい。英語ばかりのコメント欄に、Take Careの文字を見て自分と同じような人が世界にはいるのかもなあなどと思う。

 夜、窓から見えるアパート? の屋上でバーベキューをしている人たちが見えた。実に楽しそうだが、あんな場所で火を焚いて大丈夫なんだろうか。なんか蚊に刺されまくりそう。

 調子に乗って少しゲームをしたらかなりキツかった。調子に乗るな。


【7/29】

 どこから入り込んだのか、明け方4箇所ほど蚊に刺されるわ、暑くて汗が気持ち悪いわであまり眠れなかった。

 食欲は通常に戻ったけど鼻はなぜか完全に死んだまま。うまいので梅干し入りお粥は朝食用とする。

 睡眠不足のせいか強めの頭痛が。

 汗だるまになるの嫌だから解熱鎮痛薬飲むのやめようと思ったけど頭の痛さに耐えかねて結局飲む。昼からは飲まないことにしよう。

 1時間くらい仮眠すればもうぐんぐん気温が上がってくる。今日も晴れまくり。ここらで夕立の一つも来てくれないか。鳥や虫は熱中症にならないのだろうか。

 冷しゃぶの残りが昼食にて終了。明日はまた買い出しに行く必要がある。

 よく考えたら夕食がない。仕方ないのでお茶漬けにした。その辺に放置されてたシケてたせんべいとか入れた。まあまあうまい。

 そういえば漢方薬を飲み忘れてたので食後に飲んだ。どうしてこう漢方薬というのはどれも同じ味がするのか。多分甘い味を付けてるんだろうな。でなきゃ植物のエキスがあんな一律に甘いはずがない。昔からあの独特のにおいも好きではなかったが、今は鼻が死んでいてよかった。


【7/30】

 久しぶりにちゃんと眠れた気がする。しかし頭は痛い。

 体の調子はだいぶ戻ってきた気がするけど、鼻が死んだままなのはどういうことか。これが後遺症というやつか。

 朝食にお粥を食べるのはもはや梅を食べたいからだ。ついでにビーフジャーキーも食う。異世界でこれを出したら驚かれるだろうななどと妄想する。

 インターネットなどをしていると目の奥が辛くなり、少し横になる。起きても頭痛が収まらない。これまだ治ってないな?

 買い出しに行き、ひき肉などを買う。なぜひき肉なのか。気分。あと完全メシ。ミニトマト。

 頭痛がひどい。解熱鎮痛薬を飲むと漏れなく汗だるま人間がセットでついてくるので我慢する。

 途中まで読んでいたシグルイを全部読み終わった。面白かった。伊良湖が主人公だろこれ。

 昼食:台湾まぜそば風完全メシ。にんにくが香るらしいが一切感じない。ソースの風味がちょっとするかな程度。でもまあまあうまかった。鼻が生き返ってからまた食べたい。

 冷凍の今川焼カスタードがめちゃくちゃうまい。甘さ控えめでトロッとしている。普通のあんこも普通にうまい。また買おう。

 午後、雨。最高に涼しい風が入ってくる。雨も入ってくる。このまま夏終了といきたいところだが、どうか。


【7/31】

 休職最終日(予定)。

 体調はほぼ戻ったと思う。喉は痛くない、食欲もある。咳も出ない。頭は微妙に痛いような気もする。

 ただ、匂いがまったくしないんだけど。鼻が死んだままうんともすんとも言わない。これは長引きそうな予感がする。

 職場に電話。行きたくないけど治っちゃったから行くしかない。ずっと休んでいたいが健康の方が大事だな。明日から仕事です。




 以上ー。

 ちなみにこれを書いている今も鼻はちょっと変です。

 匂いを嗅ぐことはできるんだけど、口の中に入れた食べ物の匂いを感じにくいというか。まあそのうち治るでしょう。





【おまけ】

 世界一美味しい食べ物決定戦INコロナ

 一位:レトルトの梅粥に南高梅の梅干しいれたやつ

 二位:今川焼(カスタード)

 三位:アイスの実 濃いぶどう

 冷凍の今川焼は今も買って食べてるくらいにうまい。

 カスタードがおすすめだけど、健康ならあんこも美味しい。両方一個ずつレンチンするとちょうどいいおやつになる。

 アイスの実は高いけど二粒くらい食べると満足するのでコスパはいい気がする。



 【最後に】

 病気すると金がかかる。

 予防してこ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コロナになったので 高山しゅん @ripshun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ