第61話 女神サイテンとの最後の戦い

 トオルの新しい国造りが進んで行くのを見て女神サイテンは苦々しく思っていた、トオルの周りには4神獣が護っていて迂闊に手が出せない。サイテンには秘策が有ったが、それを行う隙を見つけられずにいた。


 トオルのスガヤマ王国の王都建設も着々と進み遂に開国記念祭がとりおこなわれる日が来た。

 新築の王城のベランダにトジノと並んで立ち、居並ぶ国民の歓声に手を振って応える。その時光がトオルを包み込んだ。何かのセレモニーだろうと国民は、拍手喝采で口々に叫ぶ。

「国王陛下バンザーイ!バンザーイ、バンザーイ!!!」

だがその光がトオルの頭上で黒くなって渦を巻きだした。

トオルの周囲の物がその渦に吸い込まれて消えていく。空気までもが吸い込まれていくのだ。

「トジノお姉ちゃん、危ない逃げて!」玄武のヒメがトオルを包む黒い光をすっぽりと覆う結界を張ろうとするが渦の力が強くて覆いきれない。

「みんな国民をこの場から離して!」ヒメが叫ぶ。

青龍のブルンと、白虎のハッコ、朱雀のシュが大慌てで国民を1㎞遠ざける。

「ミレーナ女神様かと思ったのに急に邪神の神気に変わってしまって驚いたよ!油断してしまったな」

「トオルはどこ?どこ行った?」

さっきまでトオルが居た場所にトオルの姿は無い。あの黒い渦に巻き込まれてしまったのだろうか?

『やったー!ついにやったわ。あの忌々しいハーフドワーフのトオルを何処か知らぬこの世の果てに放り出してやったわ!愉快愉快』

その場所に似つかわしくない禍々しいオーラを纏った邪神の女神サイテンが現れて大笑いしている。

そこへ今度はミレーナ女神が現れてサイテンを拘束して詰問した。

『あなたトオルを何処にやったの?正直に言わないと承知しないわよ』

『知るもんですか。あのブラックホールは何処につながっているかなんて作ったわらわでも知らないわよ。さぞや今頃はあの夜空に煌めく星の1つにでもなっていることでしょうよ、いい気味ねあはははは』

「トオルトオル、私のトオルお願い帰って来てー!!」

叫ぶトジノの声が虚しくこだまする。

「ごめんなさいあたしたちが油断してしまっていたばかりにこんな事になってしまって」

「てっきりミレーナ女神様がお祝いに来て下さったものだとばかり思っていた」

涙目の4神獣。

『この子たちを欺くなんて良くも私のオーラを真似たものね』

『でしょでしょ、もっと誉めなさいよ。おーほほほほほ』

その時真っ白な光の筒がサイテンをすっぽり包んだと思ったらトオルが現れてサイテンの頭をポカっと殴りつけた。

「トオルだ良かった帰って来れたんだ!!」


「只今心配かけたなごめんよ。しかしさすがは女神を名乗るだけあって丈夫な肉体をしているなあ、駄目神のくせに。普通なら頭が潰れてもおかしくない力で殴ったのに無事だとはな」

『誰が駄目神よ!何で帰って来れたのよ!わらわが造ったブラックホールは出口が何処に繋がっているのかさえ判らないのに!』

「だから駄目神なんだよ。いいか良く聞け。ブラックホールの出口はホワイトホールと言うんだ。俺は俺が居た場所の座標を記憶していたからそこへホワイトホールの出口を強制的に捻じ曲げてやったのさ。幸い俺の魔力がお前の10倍は有ったから、思ったより簡単だったからな」

『噓よ!たかがハーフドワーフの分際でわらわの10倍もの魔力が有る訳無いわ!』

そこへミレーナ女神が口を挟む。

『ねえ、サイテン、あなたひょっとしてトオルが人間とドワーフの子供だと思っていない?教えてあげるわトオルは私の遺伝子と

昔私が愛したドワーフの遺伝子を組み合わせて作った身体に地球人の菅山徹の魂が宿った存在よ。つまり半神ハーフゴッドでもある訳ね。魔力の無い人間の女と神気も無くて神界を追放された駄目男神との間に出来たあんたとは比べものにならないのよ因みに今のトオルのレベルは9999よあなたは精々1000位でしょう』

『嘘よ噓よそんな話聞いたことも無いわ嘘っぱちよ』


 そこへ今まで以上に神々しい光に包まれて男神が現れた。最上級神だった。

 『お前には信じられないだろうがそれは事実だ。サイテンお前は儂の愚息と人間の女との間に出来た子供だ。出来の悪い息子でも儂の子供。お前は孫というわけだ。息子は殆ど神気の無い身体に生まれてきた。神気とは神として認められる神秘の力の元。能力の強さを高めてくれるオーラみたいなものだ。儂らの力をもってしてもあ奴の神気が増えることは無かった。それでも神の1員として育ててきたが奴はグレてしまって闇の魔力に目覚めてしまった。努力すれば大天使にもなれようものを、闇魔法で暴れ回る奴を地上に追放したら今度は自分を魔王と称して人間界を荒しまわる様になった。神々は闇魔法に対処するすべも無く、仕方なく異世界から特別な才能を持っていたり覚醒しそうな人間を召喚して魔王を討伐して貰った。それが【勇者召喚】の始まりだ。神々の失敗の尻拭いさせてしまって申し訳ない。だがその方法を秘密裏に伝えていた国家が有った。マルテウス王国だ。あやつらは、魔王討伐と偽って、召喚された者達を侵略戦争の駒にするようになった。あやつらこそ今世の魔王だ。それをトオル君が討伐してくれた。ありがとうトオル君』

最上級神のレベルは99999でこの世界の最強らしい。いくら強くても我が子可愛さで討伐出来なかったそうだ。なんか人間っぽいな。


『噓よわらわが魔王の娘だなんて信じるものですか』

『いい加減に認めろ。神々が使えない闇魔法の【ブラックホール】を使えることこそがその証拠だ』

 神様は闇魔法を使えない。魔王は聖魔法を使えない。両方使える者は日本から召喚された者の中から現れるらしい。トオルもその1人だ。

両方使える者ならどっちもの魔法の弱点を見つけて打ち破ることが可能なのだ。


 魔王とは神々から突然変異で生まれたものだったようだ。


 サイテンは闇魔法を使えるが聖魔法を使えなかった。


サイテンにも少ないが神気が有ったのは祖父からの隔世遺伝によるものらしい。

 『罪神サイテンに罰を与える。その女神の肉体から魂を抜き取って転生させる。転生先はランダムに決定する。ミジンコに生まれ変わるかも知れないしゴブリンになるかも知れない。何千億分の1の確率で神の子に転生できるかも知れないがな、まずその可能性は0に近い。それが嫌なら魂を消滅させよう。それが祖父としての精一杯の思いやりだ』

『転生でお願いします』

サイテンは意気消沈して答えた。



 『ところでトオル君あの4カ国の兵士や国王以下貴族どもをオーガ王国の鉱山労働者として送ってくれたそうだな』

「だめだったでしょうか?」

「いやいやとんでもない。確かに肉体労働したことも無い偉ぶった者共は役立たずだったが徹底的に鍛えたら、今では猫の手よりは役立つようになったと、あそこを管理するラビーテ女神が喜んでおった。感謝していると伝えて欲しいと言っておったぞ』

「それは光栄です」


 こうして邪神サイテンとの戦闘も決着して新しい国造りに全力を注いでいけるようになった。


 余談だが女神サイテンのテイム技術は不完全だった。テイムに魅了を組み合わせたものだったが彼女の魅了は人間の男,男神、魔獣の雄には良く効くがメスには反感を抱かせるものだったので幼少期のサイテンはメスのドラゴンに何度も噛み付かれ、踏み潰されていたらしい。人間だったら何度殺されていたことやら、神の肉体だったから生き延びてきたらしい。オーガ王国の大陸を管理するラビーテ女神から聞いた話だ。因みに彼女がサイテンがミレーナ女神への誹謗中傷していたことを最上級神にチクった女神だったそうだ。


 完了


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 以上でこのお話は完了です。ここまでお読みくださった皆様どうもありがとうございます。


 当分の間、以前に投稿した作品の見直し修正に励む予定です。

それにフォローしたものの、読みに行けていなかった作者様の作品を読み回るつもりでおります。


 どうもありがとうございました。


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加護が【自給自足】で追放された僕は自由に生きる 霞千人(かすみ せんと) @dmdpgagd

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