第60話 トオル国を造る②

 トオルの国づくりは着々と進んでいた。各国の応援も有ったが特に色々な手続きをしてくれる人材の派遣をして貰ったのがありがたかった。1国だけでなく複数の国が特定の国に恩恵が偏ることの無いように話し合って進めてくれたのが嬉しい。

トオルとトジノ夫婦はお飾り国王と妃で、実際の政治とかは各国から派遣された人材の合議制で進められるように決定された。


 これなら今後も自由に動けそうだなとほくそ笑むトオルだった。


 新たなスキル【書類速読理解】も手に入れた。これで易々と国王の権力を利用されることも無いだろう。

 このスキルは書類に不審な文言が入っていると即座に判ってしまうらしい。許可していないのに国王の印鑑が押されたり偽造サインが書かれるとトオルやトジノ、宰相に通知されるという。優れモノだ。

 宰相は各国の代表による推薦制で選挙によって決定された。元ヤピン王国の宰相経験者のエランさんだった。噂を聞くに、外交手腕に優れた素晴らしい人物だと言うことだ。

孫相手の為に引退して楽隠居していたらしいがヤピン王国、キツナエ王国等のたっての願いで重い腰を上げてくれたらしい。ご苦労様です。


 トオルの国の名前はトオルの本名菅山徹から取ったスガヤマ王国に決まった。

王都は某国から贈与されたあの土地に決まった。何も無い土地だったので街造りにとっては都合が良かった。ここからはモスタの森にも近く、元アキレス領にも近く、チリント王国にも近い。


オイラキ山脈の向こう側にあるバジリス王国へ抜ける道を造るのにも山脈が繋がる低い地点を道路にすれば比較的楽に開通出来そうだ。バジリス王国に計画を伝えると快く賛成して貰い、人材と予算も、自国分は負担することを約束してくれた。



王国造りの大規模工事バジリス王国への街道工事には自国の人だけでは足りないので周辺諸国に出稼ぎ労働者を募集を掛けた。工事開始地点に宿舎を作って、食堂、酒場が出来てちょっとした町が出来上がった。工事現場と宿舎との移動には転移魔道具を作って現場監督に預けておいた。


 工事の細かい所は専門家に任せるとして、トオルは大まかに山裾を削って要らない土石はマジックボックスに収納していく。崖になったところは魔法で固めて、背の低いしっかり根の張る草木を生やしていった。ちょっとやそっとの雨風で崩れることは無いだろう。

雨水を流す側溝やらは工事人夫に任せる。道を平らにして固める工事も人夫にお任せだ。とりあえずトオルの責任の仕事はバジリス王国側も含めて完了させた。

今回の大規模工事で金銭の流れが出来て宿舎の町も新しく出来た道路を通って来る人を泊める宿場町になっていった。


バジリス王国側にも出稼ぎ労働者が集まり町が出来た。工事が終わった後のことも今のうちに考えておかなければいけないだろう。茶屋や宿場町は道路の所々に出来た。これらは今後客の評判で淘汰されていくことだろう。



オイラキ山脈の裾野には紙作りに最適な樹木が豊富に育っていた。優秀な人材を募集してトイレットペーパーとティッシュペーパーの製造方法を研究して貰ってこの国の特産品にして売ろう。製紙工場を作って国民の働き場所を用意したいのだ。


 こうしてトオルの国造りはスタートを切った。

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