第59話  トオル国を造る①

 邪神こと女神サイテンは4カ国の軍隊があっさりとトオルに敗れ去り、国王共は城ごと潰されて行方知れず。せっかくテイムしていた魔狼や魔蜥蜴を貸し与えてやったというのに何処かに飛ばされてしまって1匹も帰ってこない。

『アー、もう腹が立つ!情けない人間共じゃ!せっかくわらわが手を貸してやったというにハーフドワーフ1人殺せないなんて!もうこうなったらわらわが自ら仕置きしてやろうぞミレーナめ、どこであれほどの人材を拾って来たのか?じゃが、たかが亜人ごときにわらわが負けるはずもない。待っておれトオル。もうすぐじゃもうすぐわらわが楽にしてやろうぞ』


 女神サイテンはトオル1人を倒す為だけに自分の仕事を放棄して策を練り、遂に行動を開始した。


 一方その頃トオルはひさしぶりにアテルイ村に帰って、妻のトジノとのイチャイチャを楽しんでいた。

「酒造の方はどんな感じ?」

「もう私が付いていなくても大丈夫よ。味噌と醬油も納豆も順調に売れ行きを伸ばしているわ」

「実はこの世界でも質の良いイースト菌が出来たんだよ。つい最近まで滞在していたアイリス王国なんだけどね」

「それはすごいわね、私も色々とやってみてるけれど中々思い通りの麴菌が出来ないのよねあともうちょっとなんだけど……」

「なあに、焦ることはないさ。俺達ドワーフの寿命は数千年とか言われてるしトジノも俺も不老不死に近いと鑑定で出るから若い時代を延々と楽しめるってもんさ」

「それもちょっと考えちゃうけどね。でも、人間の頃は不死って嫌だなと思っていたけどあんたと二人ならそれでも良いかなって

思うようになったの、私もドワーフの考え方が沁みついて来たのかな」

「不老は良いぞ、何時までも何時までもこうやって子作りに励めるじゃないか」

「ヒャイン、ああもうあんたったら!お返しよ」

「オオオ、やったなこれでどうだ!

「アアアアア……」

以下自主規制。



翌日転送バッグにカンセコ領主、アキレス領主連名の手紙が届いた。重要な会合を開きたいのでアキレス領領主館に2日後朝10時に来て欲しいという内容だった。

(一体何事だろう)と不案な気持ちで訪れるとそこにはアテルイ村の村長も来ていた。

挨拶もそこそこにカンセコ領領主のダリス様が言った。

「トオル殿に新しい国を造って,我々をその国の国民にして欲しいのです」

「エエエー!!」

どいうことなのか聞いてみるとカンセコ領もアキレス領もアテルイ村も元はマルテウス王国の物だったがマルテウス王国が滅亡してからはどの国にも属さない宙ぶらりんの状態になっているらしい。そこで経済的に恵まれている彼らの領や村を手に入れようと周辺諸国からあの手この手で懐柔しようと接触して来るようになった。

何時までも宙ぶらりんな状態ではまずいと思った彼等は恩恵をもたらしてくれたトオルに国を造ってもらいその国に属せば

解決するだろうと考えたらしい。

その際にはアテルイ村はアキレス領の守護下に入りたいと村民549名の署名入り嘆願書を持って来ていた。


「ちょっと待ってください、急にそんなことを言われても……ミレーナ女神様にもお伺いを立てないといけないし大陸中の国家にも承認して貰わないといけないでしょうし……」

「ミレーナ女神様ならトオル様の国造りに賛成されておりましてよ」

そう言ってきたのはアキレス領の教会からアテルイ村に配置された聖女のメリーヌさんだった。

「それは本当ですか?」

「勿論ですとも噓だとお思いならこの後教会にてミレーナ女神様にお聞きくださいませ」


 これは大変な事になった。トオルは焦った。

(国を造るなんてそんな大それた事したくも無いし、出来る筈もない。俺はスローライフがしたいんだ!)


 教会に行ってミレーナ女神様を呼び出して訴えたが非情にも女神の答えはトオルの望まぬ事だった。

『まずは全部の国にトオルが国を造ることについてどう思うか、手紙で訊ねてみなさい。貴方は自分が思っているよりも重要人物に、なっているのよ』


 トオルの国造りには大陸中の国が大賛成だった。特にバジリス王国とチリント王国は我々もその国に組み込んで欲しいと願い出て来た。ヤピン王国、エストリア王国等トオルのおかげで経済的に豊かになった国々からは全力で応援しますとの返事が有った。

それともう1国、元マルテウス王国の領地で有った所をトオルの国に編入して欲しいという申し出が有った。戦勝国として領土を貰ったはいいがその土地にまで手が回らないから返還しようと思っていたがトオルが有効活用してくれるならその領土を贈呈したいと言うことだった。厄介ばらいと言えばそうなのだがそこがモスタの森に接していてチリント王国にも接している地形上何か使えそうだなと思うトオルだった。

 海を隔てたオーガ王国からも手助けできることが有ったら言ってくれとの嬉しい返事が有った。

これはもう腹をくくるしか無いなと、国づくりを決心するトオルであった。

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