第13話 チュートリアル完全消滅

 ザスッ!

 深深と剣が突き刺さるっ!


 ドクンッ!

 心臓が大きく脈打っていた。

 剣を通して伝わってくる。

 竜王は心臓を好きな場所に移動させることができる。

 こいつはしっぽの先端につけている(誰もこんなところ攻撃しないし。攻撃しにくいから)


「グギャァァァアァァァァァァァア!!!!!!」


 轟く断末魔。

 頭を上げて左右に激しくぶん回している。


「すごい、断末魔だね」


 技を使おうとしたエリス……だけど問題は無いだろう。


「いや、攻撃はもういいよ。死んでるから」


 グラッ。


 竜王は体全体を地に横たえた。

 そして、サラサラと体は砂みたいな粒状になり、空気に溶けるようにして消えていく。

 竜王は完全に絶命した。


 原作と同じ死に方だ。

 ぱちぱち。

 まばたきしてたエリス。


「よくわかったね。竜王の弱点。いや」


 エリスはそこで一度区切りこう続けた。


「知ってたんだよね?竜王の弱点」


「正解」


 そう答えながら、俺は竜王の死体からとあるものを引き抜いた。

 竜王はあらゆる生命をコントロールする能力を持っていた。(それを使い原作では暴れてた、特にチュートリアルが悲惨なことになったのはこの能力のせい。そして、ガメーイが頻繁にここに足を運んでいたのはこの能力を狙っていたからだ)


 その能力の源だったのがこのアイテム【王の指輪】というアイテム。


 それを回収した。

 現状特に使う予定は無いけど、悪人に回収されるよのはさけたいし。


「いろいろ知ってるみたいだけど、約束通りなぜ知ってるかは聞かないよ」


「そうしてくれると助かる」


 俺たちは穴の下から地上へと帰ることにした。

 その道中でエリスは聞いてきた。


「ちなみにここまで簡単に倒せるのは予想通り?」

「もちろん」


「私の行動はどう?」

「エリスの行動はまったく予想できないものばかりだよ」


 そう答えるとエリスはニヤニヤしていた。


「えへへへ、私だけキミにとってダークホースになれてるってことかな?」


 まぁ、ダークホースと言えばダークホースである。

 でも


「俺は計算狂うの好きじゃないからある程度従順な方が好きだよ?」

「これからはダークホースやめます」


 即答だった。



 村に戻ってきたがまだ日は登っていなかった。


 二、三時間くらいは眠れそうだな。


「ふぁー」


 自然とあくびが出てくる。

 気が緩んでる気がする。

 仕方ないけど。


 兼ねてからの目標であったチュートリアルの完全破壊が終わったわけだし。

 もう少し時間かかるかなと思っていたが色んなイレギュラーが起きて早く終わってしまったな。


 エリスの仲間入りがほんとに大きかった。

 それにしても、これからどうやって生きようかなー?

 こっからは完全に自由だし。(ここからのストーリー改変とかには興味無いし)

 むしろちょっと困るくらいだよな。いきなり自由に生きてくださいって言われても。


 そう思いながら宿舎の方に向かってたんだが……。


 宿舎前に人影があった。


(こんな時間に?変だな)


 目を凝らしてみる。

 カレンだった。


「あっ、アルマ」


 俺の方に走って近寄ってきた。


「どこ行ってたの?心配したよ?教官のとこにいってから姿見えなかったし」

「ちょっと、用事で」


 ちらっとエリスの方を見てみたがいなかった。


 少し離れたところに居たので気を使って離れたのだろう。


「危ないこととかしてないよね?」

「危ないことはもう終わったよ」

「そう?ならいいけど」


 あー、そういえば忘れていたな。


 俺のことを見てくるカレンの目が若干曇っている。


(俺にはカレンを幸せにするっていう大役が残ってるじゃないか)


 そのためにも、もっと強くならないとな。

 うん。


 でも、原作ではこんな色の目してなかったはずなんだけどな。

 これも俺が変えてしまったのだろうか?



 宿舎に帰った。

 肩の荷が降りていた。


「ふぅ……」


 戦闘兵には完全な個室というものはない。

 基本的には2人部屋を与えられてルームメイトと一緒に生活をする形だ。(ちなみに俺はルームメイトの顔を知らない。興味無いしこれまで忙しかったからだ。ここは完全に寝るためだけの部屋だった)


(やっと、心から休めるな)


 これまでの苦労を少し愚痴りながらベッドに向かった。


 俺のベッドは2段ベットの上だ。

 さっさと登って今日も眠りにつくことにした。


 ルームメイトはいつも静かに寝ている。


 俺のルームメイトガチャは当たりなようだ。

 いびきで起こされることもないしね。




 俺がチュートリアルを粉砕してから1週間が経過した。

 ガメーイが消えてから数日後。

 教官たちはガメーイが居なくなったことには気付いていた。


 不審に思った教官たちがエリスに質問していた。


『ガメーイ様が先日から見えないのですが、なにか知らないでしょうか?』


『知らなーい』


 ガメーイの用心棒だったエリスにそう言われては教官たちも言う言葉がないようである。


 そのため表向きはガメーイは勝手に村の外まで出歩いてそのまま行方不明になったことになっている。

 教官たちの話を聞く限りでは王都の方でもそういう処理がされたようだ。


 エリスが殺したという発想になることはまず無いだろうな。

 そんなわけで俺は一週間ほどのんびり暮らしていたのだが……。


 今日はビッグニュースがあるそうだ。

 俺たちは教官に呼び出されて朝の集会を行っていた。


 戦闘兵の一日は朝の挨拶から始まる。

 その挨拶をするのはもちろん教官なんだけど……。


(ん?)


 前を見ていた俺の視界にここにいないハズの人が入ってきた。


 ザワザワ。

 戦闘兵たちが騒ぎ出した。


「お、おい、あれって」

「間違いない。あれはオルバさんだ!」


(あー、知ってるぞあいつ)


 俺たちの前に立つのはオルバ・アーキマンという男。

 原作でも登場した騎士の男。この男はガメーイと敵対関係にあった。


 ちなみに登場するのはかなり後になるのだが。


(ガメーイがいなくなったせいで、展開が変わったのか?)


 そう思っていたらオルバが現状の説明を始めた。

 その内容は俺が予想していた通りのもの。


 この村は今まで実質的にガメーイ一派によって支配されていたが、奴がいなくなったおかげで支配は終わった。

 これからは自分たちが手助けするから頑張っていこう、みたいなもの。


(着々といい方向に向かってるようだな)


 オルバ・アーキマンは善人である。

 最初から最後まで原作主人公サイドとして描かれた人物。

 そんな人がこの段階で絡んできた。これからのストーリー展開は悪いようにはならないし、俺の未来も期待していいだろう。


 まぁ、もちろんストーリー展開は注視しておくけどね。

 わずかにでも変な流れが見えたら、即手を出すつもりだ。


 俺はしあわせになりたいんです。

 それだけなんです!






【補足】

チュートリアル粉砕編がこれで終わりました。

ここまでで少しでも面白い、面白そうと思っていただけたなら評価やブクマなどしてもらえると嬉しいです。

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チュートリアルで死ぬはずだったモブですけど、努力しすぎたみたいです。うっかり主人公の出番根こそぎ奪ってしまいました、好き勝手やってるだけなのにヒロインたちからの愛が重くて困っています にこん @nicon

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