第6話 そこはメニエール氏の隣の庭だったみたいだけれど

 メニエール症候群を経験して、もっと楽しく生きたいなあ、と思うようになりました。

 もっと、自分のしたいことに素直でもいいのではないか、と。

 ちょうど、家からそんなに離れていないところで、小説講座が開かれていました。

 すでに、小説を書くことは好きでした。

 でも、本になっている小説と自分の小説は何かが違う、と思っていました。小説講座に通えば、それがわかるかも。

 何より、小説を書きたかった。


 たまたま空席があって入った小説講座では、いろんなことがありました。

 もちろん、人が集まればゴタゴタはあるもので、当時20代前半だった私などは、どちらかというと諸先輩方にいろいろ言われる側で。


 就職活動は、修論を仕上げてから再開しました。働き始めたのは人よりほぼ一ヵ月遅れでしたが、なんとかなりました。


 メニエール症候群、と言われるほどの症状は出ていないけれど、未だに、吐き気やめまい、耳鳴りに悩まされる日があります。

 ためるなといわれたストレスはたまりまくることもあるけど、まあ、なんとかなってます。

 心がしんどくなったら、とりあえず休んで、それから自分がいちばんしたいことって何か考えます。

 

 誤算もいくつかありました。

 いちばんびっくりしたのは、小説講座に通っている人で、何人かメニエール症候群の方がいたということ。

 大学とか仕事などでメニエール症候群のことを聞かなかったことから考えると、小説を書くことはメニエール氏の家の隣の庭にいるようなものかも知れない、とも思いました。

 そういった人からは、耳が聞こえにくくなる、といった、メニエール症候群の怖さも教えてもらいましたし、家族の知人からは、死ぬほど辛く感じることもある、ということも知らされました。

 でも、まあいいや。

 

 回転性めまいになったら、私はまず、横になります。

 目を閉じて、時間をやり過ごします。

(トイレだけは何とかして行きます。早めに、ギリギリになると焦るので。)

 ゆっくり目を開けられるようになったら、きっと、楽しいことをするんだ、と思いながら。


 みなさまにも、楽しいことがたくさん待っていますように。


 お読みいただきありがとうございました。


                           〈おわり〉

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カクヨム版 メニエール氏は小説家が好きかもしれない 江東うゆう @etou-uyu

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