編集後記
まずは総選挙特集号の発売が遅れたことをお詫びいたします。
これには理由があり、ステージ上でのアイドルたちの心境に近づくため、可能な限り当日に近いスケジュールでインタビューを行いました。記事のインタビューは、本番直前のリハーサルの合間、彼女たちの貴重な休憩時間を割いて行われたものです。そのような事情があり、発売がステージの前日となってしまいました。なお、インタビューの掲載順は、ユニット曲のセンターの並びとなっています(センター順の決定は中間順位に応じたもの)。
我々編集部は、彼女たちの実像、リアルな姿を描き出そうと尽力しました。
総選挙のグランドフィナーレに向けた一年間の密着取材。我々はオフショット、練習風景、バックステージでの姿を主眼に据えてきました。ラストステージまで残った四人、そして残らなかったアイドルたちへの取材に関しても一貫した姿勢で、『生きたアイドルの実像』を追求してきました。
なぜアイドルたちの、アイドルとしての姿ではなく、年若き少女としての姿を読者にみせるのか。かつて、暗黒時代のアイドルたちの失墜を招いたパパラッチと同じではないのか。批判の声も少なくありません。しかし、私たちは知らねばなりません。人工太陽の犠牲となる少女たちの存在を。あえて強い言葉で表すなら、彼女たちは人柱。その側面があることを否定できません。
十四年前、ひかりがなにを思い、地上を去ったのか。我々は彼女に役割を押し付けた。暗闇の恐怖に負け、ただひとりに世界の運命を託した。その責任は彼女以外のすべての人類にある。
黒点の拡大の一報が入ってきました。日に日に、人工太陽の温度と光量は低下しています。私はゲネプロを見守りつつ、この編集後記を書いています。
ひかりは燃え尽きかけており、その時間も残りわずか。
十四年。彼女は歌い続けてきました。
当時、私は彼女の熱量に最後までついていくことができなかった。その負い目から、アイドルたちを追い続けてきました。
新たな人工太陽となるであろう彼女たち四人が、どのような決断を下そうとも、私たちは受け入れねばなりません。あるいは、私たちに光をもたらさなかったとしても。彼女たち、最後のアイドルを通して、知ることになるでしょう。
ひかりの口癖だった『愛してる』の意味を。
憎しみか、母性か、使命感か、あるいは超越的な愛なのか。
私は十四年間、このときを待ち続けてきた。
おかえり。おつかれさま。ごめんね。ありがとう。
この声が届かなくても。
【編集 文責 天乃アオイ】
ひかりのうた 志村麦穂 @baku-shimura
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