第33話 モテ期なんですかね?

「やっぱり、痩せるまでは杏奈と会わない方がいいのかなって、思うんです」


 昨日の夜、ずっとこのことを考えていた。

 会えばケンカするし、何故か俺が痩せるのを嫌がるし。でも俺はちょっとくらい痩せたい。いや、結構だいぶいっぱい痩せたい。


 それなら、この喧嘩をしているのを機に会うのをやめてもいいんじゃないかと、そう結論付けた。


「その杏奈さんは、会えないと寂しいんじゃないですか?」


 エマさんはそう言うが、あれ以来俺の家にも来てないし。部屋のカーテンだって締め切ったままだ。


「ずっと拒否られてて。多分、俺に愛想を尽かせてますよ」


 自虐めいて言った。

 実際、大学でも避けているかのように会わない。


 杏奈は俺がいなくても、友達もいっぱい居るし、男からもモテるだろう。

 わざわざ俺に構う時間を作らなくていい。


「悠伍さんの話を聞いてる感じだとさ、杏奈さんって悠伍さんが好きなんじゃない?」

「はっ? 杏奈が、俺を?? ないないない!! それだけはないですよ。ただの幼馴染ってだけです」

「そうかなぁ? エマはどう思う?」

「私も、杏奈さんは悠伍さんを誰にも取られたくないって言っているように感じます」

「エマさんまで……」


 思いもよらないことを言われて、思考回路が停止してしまった。


 ……杏奈が? ……俺を?


 どこをどう捉えれば、そんな発想に行き着くのか。


「万が一、俺を好きならダイエットに協力してくれたっていいと思うんですけど」


 誰だって、隣に立つのはカッコイイ男がいいに決まっている。

 こんなデブと一緒にいたって、自慢も出来ないじゃないか。


「悠伍さんが痩せてカッコイイのが周りにバレたくないんじゃない?」

「そそっ! そんな!! 痩せてもないのに、カッコよくなる保証なんてないし!!」

「いや、ボクの見立てだと癒し系イケメンって感じになると思うよ!」


 癒し系イケメンだと?

 そうなのか?


 自分でも想像出来ないのに、女子の目にはそんなふうに映っているのか??


 痩せてもないうちから、褒められた気持ちになっててれてしまう。


「それで、悠伍さんは杏奈さんをどう思っているのです?」


 エマさんから逆に質問されて困ってしまった。


 杏奈のことをどう思っているか……なんて、考えたこともない。

『どういう関係ですか?』と聞かれても『幼馴染です』としか返せない。


 これには俺の方が頭を抱えてしまう。


「杏奈を異性として見てるか? って事ですよね……」


 頭を捻っても、幼馴染以外には何も思い浮かばない。


 あまりにも考え込んでしまい、そんな俺の様子にステラさんは遂に失笑し始めてしまった。


「杏奈さん、脈ナシか」

「いや、急に言われたから戸惑ってしまって……」

「でも私も、杏奈さんの気持ち分かる気がします」

「どういう事ですか?」

「悠伍さんの本当のカッコ良さに、自分はもう気付いているのに、あとから気付いて近寄らないでって思うの、乙女心ですよ」

「はえぇぇぇ???」


 どうした、どうした。

 おれ、まだデブなのにモテ期なんか??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

美人姉妹の♡ご褒美特典付き♡異世界ダイエット企画。〜痩せたいのに幼馴染のギャルに邪魔されるんだが?〜 亜沙美多郎 @asamitaro-novel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ