通夜の出来事

神山れい

不思議な体験でした

 それは、父方の祖母の通夜が終わり、通夜振る舞いの最中に起きました。


 喪主である父親が挨拶をし終えると、わたしの後ろから拍手が聞こえました。

 もちろん、疑問には思いました。「めでたい席でもないのに、拍手とかするんや?」と。それでも聞こえ続ける拍手。そういうものなのかとそれに合わせて拍手をすると、なんとわたしだけでした。

 親戚一同がわたしをみて「お父さん頑張ってるから拍手したい気持ちはわかるけど、したらあかんて!」と爆笑。


 わたしは不思議でなりませんでした。

 誰一人として、後ろから聞こえてきた拍手に気付いていなかったのです。

 そこでようやく後ろを振り向くも、誰もいませんでした。


 そのあと、寝ずの番でわたし達家族は会場に残りました。

 一階の部屋には叔母家族。二階の部屋にはわたし達家族。ただ、部屋が狭く全員が入りきれなかったため、わたしと妹は二階のエレベーターホールの前にあるソファーを繋げて寝ることに。

 場所も場所なのであまり眠れず、やっとうとうとし始めたときでした。


 廊下を歩く音が、聞こえてきたのです。

 その足音は、両親や他の兄弟が眠っている部屋あたりの廊下から聞こえてきました。足が悪いのか、引き摺って歩いているような、そんな音でした。

 怖くなり、妹を起こそうとするも起きず。わたしは寝たふりをすることで精一杯だったのを、今でも覚えています。

 その足音は、わたしと妹のそばまでやってきたかと思うと静かになり、少ししてから階段を降りて行きました。

 一体何なんだとおそるおそる階段を見てみると、誰もいません。

 けれど、足音は確かに聞こえていて、下へ向かって降りて行きました。


 そこからは、あまり覚えていません。

 気がつくとまた足音が聞こえ「またかよ!」と思ったのですが、今度は母親でした。


 落ち着いてからこの出来事を家族に話してみると「ばあちゃんが歩いてたんちゃうか?」と。

 言われてみれば、寝たきりになるまでは足を少し引き摺って歩いていました。


 祖母は、末っ子で長男の父を可愛がっていました。

 父が寝ているところからわたし達孫が寝ているところまで、様子を見にきていたのかもしれません。


 ──本当のところは、よくわからないですけど。

 そうあればいいなと、思っています。

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通夜の出来事 神山れい @ko-yama0

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