第4話 幼馴染どうしは素直になれない

 主人公の祖父母の家に帰省。

 それについてきた幼馴染と一緒に縁側でくつろいでいる。

 田舎の星空はくっきりと見え、ほたるの光が幻想的な空間をつくりだしている。 


「よっし、屋台飯、食べよ~!」


 ビニール袋からいろんなものをガサゴソと出す音。


「まずは定番の焼きそばでしょ、フランクフルトに焼き鳥、牛串、デザートに安定のベビーカステラ」


「そして……じゃじゃーん! 私の大好きなりんご飴!」


「一口食べたいって言ってもあげないからね」


「子供っぽい?

 いやいや、結局子供がおいしいと感じるようなものは誰が食べてもおいしいってわけなの」


「あと、ミルクせんべい食べながら言っても説得力ないから」


「――わかる。あの水あめを割り箸で練りながらぶらぶら歩くのがいいんだよね」

「歯にくっついて、しばらくほかの食べ物が水あめの味になっちゃうけど」


「……高校生になって、このお祭りに行くとは思わなかったな」


「――私が小学校中学年からこのお祭りに行かなくなった理由?」


「いやー、……ていうか、私でよかったの?

 このお祭りはいつメンでワイワイするのが恒例だったよね?」


「――高校生になってから、誘うのがなんとなくきまずい?

 ふーん、まぁなんとなくわかるけど」


「その気まずさゆえに私を誘ったわけだ」


「別にそういうわけじゃない?

 おいおい、強がるなよ~」


 主人公の脇腹をツンツンと人差し指で突く。


「拗ねるなって。

 それで、私を誘った理由は? ほかにあるんでしょ?」


 主人公が言うか言わないか迷っていると、遠くから花火が打ちあがる。


「おっ、始まったみたい」


「……久しぶりに見たけど、やっぱ綺麗だね」


「――綺麗?

 何回も見てるアンタが言うんだから、すごいよね」


「初めて見た?

 いやいや、ずっと友達と一緒に行ってたじゃん」


「――私の浴衣姿?

 ……た、確かにね。これお母さんが昔着てたやつで、結構高いらしいよ?」


「風情がないこと言うな?

 ……それもそっか。

 今だけは、ね? ほら、こういう場じゃないと言えないこととか言っちゃう?」


「そんなボロは出さない?

 えー、つまんないの」


「……今日の花火大会誘ってくれて、うれしかった」


「茶化すな?

 ……ホントのことなのに?」


「――」


「ふふっ、私がちょーっと揺さぶっただけでボロが出るなんて、メンタルザコザコじゃん」


「やっぱ私のことが好きなんでしょ?」


「――そんなことよりも、花火を見ろ?

 あー、話逸らした~」


 花火大会の最後を飾る、特大の花火が打ちあがる。

 不意打ちだったので、彼女は主人公のほうへと体を反射的に寄せた。

 主人公は驚いた彼女の腕を組む。


「ご、ごめん。思った以上に大きな音で驚いちゃった。

 あの大きいやつがクライマックスだよね?

 時間ってあっという間に過ぎちゃうな」


「……てかなんで、私腕組まれてるんだろ?」


「――好きだ?」


「……へぇ?」


 幼馴染は照れた顔を隠すために離れようとするが、がっちりつかまれてるので動けない。

 平静を保っているように見せるため、消え入りそうな声を出す。


「ま、まぁ、昔から知ってたし、別に驚いてなんかないし。

 あれかな、今日も言ってくれないかぁって嘆息してたところの不意打ちだったから」


「……取り乱したわけじゃないから。

 と、当然だもんね。

 こうなることは流れ的に……ね?」


 主人公は幼馴染に反して、実にあっけらかんとしている。


「な、なにか言ったら?」


「どうして俺が昔から、花火が好きだったことを知ってるのか?」


 赤くなる頬はさらに耳まで広がり、幼馴染は組まれた腕をぶんぶん振り回す。


「……と、当然じゃないっ!

 アンタが昔っから花火が好きだったことぐらい知ってるわよ!」


「三度の飯よりも花火が好きで、屋台そっちのけでいつも花火のこと考えてることも!」


「――そこまでじゃない?

 う、うるさいわね! 口答えしないの!

 てか、離してっ!」


「――」


 聞こえないぐらいの小さい声で呟く。


「もしかして、私がからかわれてる?」


「――な、なんでもないっ」


「この、意気地なしっ!

 腑抜けっ! 小心者っ!」


 主人公の胸に飛び込んで、上目遣いで言う。


「早く私に告れよ、バカッ……」

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