第3話 幼馴染だから間接キスぐらいなんてことない

ファストフード店のテーブル席で対面になって座る二人。


「それじゃあ早速、期末テストお疲れぇ~!」


「え? なんでジュースじゃなくてハンバーガーで乾杯するのか?」


「もー、そんなのどうだっていいじゃん!

 細かいこと気にしすぎたら、モテないぞっ」


「……じゃあ、右手にハンバーガー持って、左手にジュースを持って、ダブル乾杯~」


個包装されたハンバーガーとドリンクをあわせる。


「最初にハンバーガー食べるやつを初めて見た?

 ほほぉ、お主は好きな食べ物は最後に残すタイプなんじゃな?」


「わしは好きなものから食べる派なんじゃよ」


「――やめんか、わしを年寄り扱いしてジュースを強要するな!」


「ふつうは先にのどを潤してから食べる?

 私、全然気にしないけど?」


「あぁ、だから最初にハンバーガーで乾杯するときに気後れしたんだ」


「でもあれだよね、祝杯ってあるじゃん?

 やっぱりお祝い事って飲み物でするものなのかな?」


「大人たちはお酒が大好きだからそれでいいかもしれないけどさ」


「偏見? いや合ってるでしょ。

 でもさ、私たちにとってジュースはメインにはどうやってもなれないかわいそうな立ち位置なのよ」


「やっぱりめでたいときは、お酒ぐらいガツンとしたものじゃないと」


「って、せっかく私がなんか賢そうなこと言ってるんだから、ハンバーガーもぐもぐしながら流さないでよっ」


「お酒も飲んだことのない子供が勝手なこと言うな?

 ふふん、私、お酒飲んだことないけど、絶対に酔わないと思うの」


「私の親もおじいちゃんも強いから」


「もしアンタがお酒飲んだら、いつもの仏頂面もとろっとろになっちゃうかもね?」


「ありえない? えーそうかな?」


「――ちょっと待って、くだらないことばっか話してたらポテト、しなしなになっちゃったじゃん!?」


「ポテトはしなしなが一番おいしい?

 えー!? ここにやばい奴いるよ! しなしなのポテトなんて、濡れたポテトチップスぐらいおいしくないよ!」


「言い過ぎ? いやいや、カリカリのポテトと比べたら天と地の差だよ」


「濡れたポテトチップス? あーたまにあるでしょ?

 シンクに落ちちゃって濡れること」


「――私と結婚する人は大変だな?

 いやいや、私みたいなびじーんと結婚出来てむしろ泣いて喜ぶでしょ?」


「――私の人間性に泣きたくなる?

 んー、まぁよく分かんないからいいや」


「てか、その期間限定の南国バーガーって何が入ってんの?」


「見せて見せて」


主人公がかぶりついたハンバーガーの断面を見せる。


「隙ありっ」


そのハンバーガーにガブリとかみつく。


「ん~おいしっ」


「――いいじゃん、女の子の一口なんてアリさんが運べる程度なんだから」


「さっきから例えが意味不明?

 おバカなアンタには私の素晴らしい感性は理解できないのっ」


「……それじゃあ」


主人公の隣にあるカバンをどかして、そこに座る。


「しゃーないから、私のトロピカルフルーツジュース飲ませてあげる」


一口飲んでから、主人公の目の前に持っていく。


「ほーら、ハンバーガーにかぶりついて、ぐいっとこのジュースを飲めば、口の中はアロハ~な気持ちになること間違いなし」


「……私には分かるぞ~?

 気になるんでしょ?

 か・ん・せ・つ・キス、意識したらもう口につけれないんでしょ~?」


「全く意識してない?

 へー、そう言うわりには私のかじったところじーっと見てるじゃん」


「まぁまぁ、ここは早めに降参しちゃって、私がそれぜーんぶもらってあげるから」


主人公はその一言で、ハンバーガーを一気に詰め込んだ。


「そ、そんなにがっつかなくてもいいじゃん」


主人公は口の中にハンバーガーが入ったまま喋る。

もちろんなんて言っているか分からないので、耳を近づける。


「もごもごふごふご、って全然分かんないんだけど」


「――私、――が、ほしい?」


「え? 今、私プロポーズされた?

 一世一代の告白をハンバーガー食いながらされた?」


悶え苦しんでる主人公を全く気に掛ける素振りもなく、ぎゅっと腕を組み、上目遣いをする。

耳に息がかかるほど近づく。


「えー、こんな場所でも抑えられないくらい、私のことが好きなんだ~?」


主人公は耐えきれず、彼女のジュースを奪って、ごくごくと飲み干す。


「え、え、えぇ!?

 なんか……そんなにストローで一生懸命に吸われるとちょっと……」


「――別に、私も意識とかしてないけどっ」


「ていうか、私の素晴らしいパスを豪快にスルーしないでほしいんだけど」


「私の持ってるジュースが欲しかっただけ?

 あーあ、このタイミング逃したら、次いつチャンスが訪れるか分からないんだからね!」


「なんのチャンスか分からない?

 ……私と一緒に遊べるチャンスですけどっ!」


「夏休みはたくさん遊びに出かけたい? 一緒に?

 まぁ、私は全然良いけど? どこに行くのか決まってるの?」


「――プール、花火、旅行、お泊り?」


「もー//絶対私のこと好きじゃん//」

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