俺のことが絶対好きなのに、なぜか俺に好きと言わせたがる幼馴染の話
智代固令糖
第1話 恋する乙女と秘めた本音
「あっ、私今日は用事があるから先に帰ってて~」
「彼氏と一緒に放課後デート?
そ、そんなわけないじゃん!」
「――校舎裏で告白もないからっ」
「高校生になったんだから、彼氏の一人や二人できてもおかしくない?
……いやいや、彼氏が二人もいたら困るじゃん」
「彼氏にするなら好きな人がいいし……」
「恋する乙女は可愛いな? もう、からかわないでよ」
「――うん、じゃあまた明日~」
教室の引き戸がガラガラと閉まる。
「まぁ、私にはまだ彼氏がいないけど、できるのも時間の問題かな♪」
「いや~みんなには申し訳ないな~」
「だって、私には幼馴染がいるもんね~」
「これは神様のお告げでしょ。
彼と私は付き合う運命であるー、みたいな?」
「てかどうして今まで幼稚園、小学校、中学校と一緒だったのに、そういうイベントが起こらなかったのか不思議すぎる」
「私の学校の七不思議のうち一つは幼馴染イベントが全く起きないことだと思う。これって妖怪か怪奇現象レベルの力が働いてる気がするし」
「それか悪魔のいたずら……」
「うーん、というか……こいつはマジでそういうこと考えたことないのかも?」
「いや、絶対にある」
「だって四季の節目に必ず、今注目している新作アニメの話するぐらいアニメ大好きだから、ラブコメ? っていうやつでそういうシーンもあるはず」
「そうだよ! 自信を持って私!」
「全オタクにアンケートを取ったら、きっと一番ぐっとくる設定として第二位ツンデレを抑えて、第一位に幼馴染がくるはずっ」
「そ、そうだよね?」
教室の後ろの席で突っ伏して寝ている主人公に近づく。
「……はぁ、アンタって本当にシャキッとしないよね」
主人公のアホ毛を人差し指に巻き付ける。
「毎日毎日、こーんなに大胆に髪の毛ピンってはねさせて、恥ずかしくないの?」
主人公の席の周りを巡回する先生のようにぐるぐる回る。
「寝惚けまなこ擦りながら学校来て、いつものメンバーが話しかけてくれるまでスマホいじっちゃってさ」
「授業始まるといきなり、シャーペン持ってノートにひたすらに書いてると思ったら、今期のアニメの感想と端っこに可愛い女の子のちびキャラ描いてニヤニヤ我慢してるし」
「あー、もうほんとに……」
主人公の耳元に近づいて囁く。
「可愛くて、大好き」
「なんでこんなにも愛おしいんだろ」
「アンタが告白してくれたら、絶対にオッケーするんだけどな~」
「聞いてる~? 聞いてないよね」
「どうしたら私に好きって伝えてくれるのかな?」
「嫌われてないのは確実だとして、……私のこと、好きだよね?」
「なんだったら初恋でしょ? 両想いでしょ?」
「仲良しの女の子なんて私ぐらいしかいないし、……あー女の子と喋るのが苦手なんだ! そうかそうか、だったら私しかいないね」
「高校生になって彼女が欲しくならない男とかいないだろうし、やっぱり時間の問題かも」
「でも念には念を入れておかないと!」
「賢い私は知ってるんだよな~。実は睡眠をとることで頭の中が整理されるということをね」
「だーかーら」
右耳に近づいて囁く。
「あなたは私のことが好きになる~」
左耳に近づいて囁く。
「あなたは私のことが好きになる~」
「すーきっ、すきすき、だーいすき」
主人公の体が反射的にビクンとする。
「へっ!? ……起きて、ないよね?」
「あ、あれか~私もよく勉強机でうたたねしてる時にたまになるやつだ」
「あっぶなー、心臓飛び出しそうになったじゃん」
「――ふふっ、今日はこれぐらいで勘弁してやろう」
主人公の体をゆすって起こす。
「おーい、いつまで寝てるの!
今日は学校でお泊り?」
「――大きなあくびして、開口一番に言うことが、うっせぇっていう暴言ですか。私、そんな子に育てた覚えはありませんっ」
「俺のお母さんかって、アンタのお母さんなんてまっぴらごめんだから」
「……じゃあ、一つ聞くけど、今日の晩御飯は?」
「カップラーメン? ふーん、私野菜炒め」
「――」
主人公の生唾を飲み込む音。
「食べたいなら、持ってくけど?」
「――食べ物に関しては素直でよろしい。
へへ、これってお母さんじゃなくて、妻っぽいね?」
「おっ? どうしたどうした~? 照れてるのか? 照れてるんだろ~」
「隠さなくてもいいんだぞ~、もっと素直になれよ~」
「――お前のこういうところがモテない?」
めちゃくちゃ動揺して、言い放つ。
「うっさい! もう一生カップラーメン食べとけっ!」
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