七歳下である弟・五典の世話に人生を捧げていたはずの琴乃は、突如として、火ノ竜・焔の巫女に任命されます。
琴乃は気弱で巫女としての仕事も、火ノ竜・焔へもどう接すれば良いのか分からず戸惑います。
しかし、ある話に登場するこの琴乃の言葉。
「はい。わたくしは、このお役目に全力を尽くす所存です」
自分が成すべきと思ったことを実行に移す芯の強さと、覚悟を決めて立ち向かう強さが根っこにはあります。
芯の強さと覚悟、そして他者を想う心。琴乃の心のありようが、味方を作り、人と竜の心をとかし、それも彼女の力となります。
琴乃の周りを囲む人と竜も個性に溢れ、読んでいて楽しくなります。
少将・充輝は、琴乃と焔の関係の芽に水をそそぐ――いえ、茶化すところが微笑ましい
風ノ竜・花嵐は、さっぱりした姉御肌。
水ノ竜・慈雨は、かわいいショタ。
ストーリーそのものは、陰謀渦巻く貴族ものですが、どちらかというとキャラクターの個性と関係性に重きを置いた作品のように思えます。
というのも、琴乃も焔も不器用で、自らが胸に秘めているものを吐露するのが苦手。
そのせいで、互いに互いを気にしているのにそれが伝わらない。それを楽しむ充輝と竜たち。
加えて、本来、巫女となるはずだった春姫の憎しみ。
様々な感情が湧き出る本作は、それを口に含んでワインをテイスティングするように飲むのが良いでしょう。
ラスト、琴乃と火ノ竜・焔がどのような結末を迎えるのか、是非、読んで確かめてみてください。
声を失い話すことができない琴乃は、ある日皇帝の側付き巫女に選ばれる。皇帝と言っても、それらは竜人と呼ばれる者達で、人ではない。
四竜皇国(しりゅうおうこく)は、竜人が治める国。火土風水の四竜人が、百年ごとに交代で竜皇となる。国は平和。しかし、四百年に一度巡る火ノ竜の御代は、『災厄の代』と呼ばれ、奇しくも琴乃は火ノ竜――焔の巫女となったのだった。
始まりからして、陰謀の匂い漂う。陰謀に思惑漂い巡る宮中に放り込まれた琴乃。焔との邂逅も、良いものとは言えなかった。しかし、それでも健気に頑張る琴乃姿は、逞しくもあり、支えたくなる。
そんな姿に焔との距離も……。
陰謀に、陰陽師、思惑に。二人の関係も含めて、見どころも至る所に。
是非是非、手に取ってみては如何でしょうか。
オススメです。