「宿題の日」(8月31日)


「はい、どうもー。シンタマカブリでーす」

「ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい」

「…………よろしくお願いしまーす。おい、どうした? なにがあった?」


「もうダメだ。絶対終わらないって。間に合わないって」

「なにが終わらないんだよ。ちょっと落ち着けって」


「……お前、今日が何の日か知ってるか?」

「8月31日だろ?」


「明日は?」

「9月1日だろ?」


「つまり?」

「え? つまりってなんだよ」


「つ! ま! り! 夏休みが終わって、新学期が始まるってことだろうが!!」

「なになに? なんでそんなテンションなの? 三十越えて新学期もなにもないだろうよ」


「お前には黙ってたけど、実は僕……高校生なんだ」

「はあ!?」


「高校生お笑い芸人なんだ」

「なんで言い直したんだよ。学生×お笑い芸人っていうのは、若いからいいんであって、お前みたいに老けたヤツがつけていい肩書きじゃねえぞ」


「定時制高校お笑い芸人なんだ」

「え? お前、定時制高校通ってんの? いつから?」


「今年から」

「全然知らなかったんだけど」


「久しぶりの夏休みだったから、ついつい漫才ばっかりやっちゃって」

「漫才はお前の本業だろうがよ。もっとバリバリやれ」


「宿題のことをすっかり忘れてたんだあああああっ!!」

「しゅ! く! だ! い! なんて懐かしい響きだ」


「頼む。手伝ってくれないか!?」

「えー。ヤダよ。高校生の宿題とか、もう解ける気しないし」


「そこをなんとか! ねっ、タマえもん!!」

「なんだよそれ。ドラえもんより猫っぽい名前じゃねえか」


「お弁当のタマゴ焼きあげるからさあ」

「オヤツのどら焼きあげる、みたいに言うな。ダメだって。ダメダメ。今晩はもう飲みに行く約束があるんだから」


「お前、ふっざけんなよ。相方が宿題しなきゃいけないときに、飲みに行くとか。血も涙もねえクソ野郎じゃねえか!」

「お前がコツコツ終わらせておかないからだろうがよ! 四国に旅行に行くヒマがあったら宿題やっとけよ」


「クラスメイトが誘ってくれたのに、断れるわけないだろう!?」

「そういえば『高校の友達』って言ってたなあ!! 完全に勘違いしてたわ」


「あー、もうどうしよう。このままじゃ先生に怒られちゃうよ」

「先生だって、三十過ぎのオッサンを宿題忘れで怒りたくはねえだろうけどな」


「ねえ、タマえもん。なにかいいアイデア出してよ」

「のび太くんに秘密道具をせびられるドラえもんの気持ちが少しだけわかった。じゃあもう、休め!」


「え?」

「9月に入ってもそのまま休め! んで、休んでる間に宿題を終わらせろ」


「夏休みを続けるってこと?」

「まあまあ、そういうことになるな」


「でもこのままだと、もうすぐ秋休みになっちゃうよ?」

「お前は宿題終わらせるのに何日かける気なんだよ」


「でも……、それってズルじゃない?」

「はあああ!? 今さらズルとか気にする? 怒られないように、いいアイデアを出せって言ったの誰だよ」


「僕は高校生のうちからズルを覚えちゃダメだと思うんだよ」

「お前はもう三十過ぎてるから手遅れだけどな」


「だから、明日僕はちゃんと学校に行って」

「行くんだ」


「退学届けを出してくる!」

「やりすぎだよ! いい加減にしろ」




      【了】




🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤


8月31日は「宿題の日」です!!!!!!!


夏休みの宿題を終わらせるために必死になった思い出を持つ人が多い8月31日。

学べる喜びに気づくことで、「全ての子供たちに教育の機会を提供する」という大きな宿題をみんなで終わらせたいという願いが込められているそうです。


思った以上に大きな意味を持った記念日でした。


そんなこんなで、23日間毎日更新の本企画も最終日を迎えました。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

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