第125話 変わらぬ想いとオーバーキル⑭

「財前って、すげぇ珍しい名前だなぁって思ったら、あの大手航空会社ASJの御曹司の奥さんだったんだな」

「……そうらしいね」


 日本最大手の航空会社・全日本スカイジェット航空の御曹司が財前先生の旦那さん。

 私も何年か前に知った事実だ。


「息子のかいくんは今年11歳で、娘の萌香ほのかちゃんは7歳」

「え……怖いよ」


 何でそんなこと知ってんの?


「教授の部屋にフォトフレームがあって、質問したら教えてくれたよ」


 医学生の頃に教授の講義を受けたことがあるとは聞いてたけど……。


「旦那さんは現役機長でもあるって」

「そうなの?!」

「あぁ、前ほどじゃないけど、今も操縦してるって言ってた」

「……そうなんだ」

「それに、5か国語話せるって言ってたっけか。とにかく超ハイスぺなイケオジらしい」

「……怖いし、キモいよ」

「あ゛?」


 匠刀と財前先生の会話が全く想像がつかない。

 だって、全然医学の話じゃないじゃん。


「気になるじゃん。桃子の主治医がどんな人なのか」


 そうだった。

 彼はそういう人だった。

 興味を示したものを、トコトン追求する性格だった。


 それが執着なのか、愛なのか。

 紙一重だと思うけど。


『仲村 桃子』という人間に、そのベクトルが向けられたことが、私にとって一番の幸せだ。


「匠刀、……大好きだよ」

「っ……ばーか、急になんだよ。事故っても知らねーぞ」

「私、頑張るから……ママにしてね?」

「……それ」

「ん?」

「初めて、桃子から誘ったと取るからな?」

「……っっ」


 そういう風にも取れるよね。


「4月17日の今日は、一生忘れられない日になるな」



 ~FIN~

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『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで 蓮条 @renjoh0502

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