第6話 エピローグ
『ドッシャアーーーーーーーーンッッッッ!!』
今、三佐公園の池に、隕石のようなものが落ちた。後で知ったんだが、これ…敵船の残骸だったらしい。他にも世界各国のあらゆる地域で、隕石群が確認されたという。
…おいおい、目立ちすぎだろ。まあ、コイツらには隠す義務も義理も無いから、お構いなしか。正体がバレて、俺の人生設計が狂わないことを祈るばかりだ。
え?どんな人生設計かって?…そ…そりゃあ、樹さんと、その…何だ。…って、そんなことはいいんだ!!今、地球は外敵の侵入を許すという、未曽有の危機なんだから!!
そう、頭の中でごにゃごにゃ考えていると、偽樹さんが、
「そうそう、お主に吉報じゃ」
…うわー、嫌な予感しかしない。
「あの地球人のメスの親の経営する、オーバーサイエンス社と商談が成立しての。先ほど、連絡があったのじゃ」
そんなチートな科学力、隠し通せるものなのか?地球の宇宙ビジネスは、一体どこまで進んでんだ…。人類が月に行くのですら困難だと思ってたのに、エイリアンと対等に渡り合うとは。
「地球外の技術力の譲渡を条件に、我々はこの星での居住権を取得しての。今後、我々エボン星人は地球を拠点にすることになったのじゃ。今、世界各地のOS社に出向しておる」
「…て…ことは…」
「これからもよろしくの、タクマっ」
「えええぇぇッー!?」
…うわー、お先真っ暗だ。こいつとずっと同居…悪夢だ。
「安心せい、もうこの星の人間を食ったりはせん」
極度の不安で膝から崩れ落ちる俺。普通の日常が…。
「あんな美味い飯がある星を滅ぼすなんて、考えられんわい」
本当に飯が地球を救っちゃったってことか?そんな馬鹿な。
「むしろ保護するに値するわ。ウチの連中が食したら腰ぬかすじゃろうのう。かっかっか」
まず、こいつらに腰はあるのか?興味はないが、とりあえず心の中でツッコミを入れる。そして、コイツは何か閃いたのか、
「それに…」
樹さんの顔で、飛び切りのにこっとした笑顔をして、
「あんなもんで良ければ、毎日作ってくれるんじゃろっ?」
「ぐっ…!!」
おあーッ!!ホレてまうやろォーーーッ!!可愛いすぎるぞ、コンチキショーーーッ!!嫁に欲しいわーーーッ!!これが、本人だったら…本人だったら…!!うがーッ!!何とかならんのかーーーッ!!
こんな奴とラブコメしても意味がねぇんだ!!その筋の方たちよりタチが悪いじゃねえか。…はー、はー。おっと、そういえば樹さんの安否はどうなったんだ?
その時、上空で何かきらめいたものが見えた。そこから、一筋の光が差し込み、やがて人影になる。そして、形取られたのは…もう一人の樹さん!?
「藍原君!!よかった!!無事だったのね!!」
「ああ、樹さん!!久しぶりの常識人!!」
「よかった…藍原君、怪我なんかしてない?」
どうだ見たか、偽樹さん!!出来る女性と言うのは、自分よりも周りを気遣える人なのだ!!飯のことしか考えてない、お前には到底、真似できまい!!ふはははは!!
…あー、さっきの告白を言う勇気は到底無い。だが、同じ秘密を共有しているという点では、少しは距離が近づいたか?でも、まだ、まともに話したこともないしなぁ…。道は遠い…。
…それにしても、本当にそっくりだ。シャッフルしたらどっちがどっちか分からんな。…あー…付き合いてぇ~。友達からでいいから、距離を縮めてぇ~。
「それと、あの娘の親父さんとの契約内容にのう…」
ごにょごにょと、俺の耳元で偽樹さんがささやく。
「…へ?」
◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇
夏休みも後半、ウチの食堂は飛び切り賑わっていた。それもそのはず。この夏は、超強力な新勢力が加わっていた。俺は不謹慎ではあるが、ニヤニヤが止まらない。
「いらっしゃいませー!!」
「いらっしゃいませ、なのじゃ!!」
今、ウチでは二人の樹さんが双子という設定で、看板娘として働いてくれている。本物の樹さんの親父さんが言うには、この方が、何かと都合がいいらしい。…さっぱりわからん。何でだ?
(もー…お父さんたら…。拓真君のことが好きだってバレたら、どうするのよ!?恋愛相談なんかするんじゃなかった…。嬉しくて、にやけちゃうのだけは隠さなきゃ…!!)
二人の美人看板娘はたちまち人気となり、マスコミも取り上げるほど。あと、自分では気づかなかったが、ウチの食堂は料理の味も評判らしい。そうだったのか…。素直に嬉しい。
そして偽樹さんは、とにかく地球の食事を気に入り、地球に溶け込んでいった。偽樹さんはおっかないけど、悪いヤツではないよう…。んー…。いや、まだ判断しかねるな。
そうだ。偽樹さんじゃ呼びづらいから、何か名前考えてやらないとな。どうしようか。その後、全銀河争奪大戦争や隕石群到来などもあったのだが、何とか無事にやっている。
やがて、地球には数万というエイリアンが住み着くのだが、これも時代の波と言ったところか。数日前までは考えられんかったな、こんな事態になるとは…。そっとしておいてくれよ…。
そうそう。この年のお盆は、二人の樹さんを連れて、両親の墓参りに行ったのだが、この二人を、亡き父さんと母さんは、家族と認めてくれたかな。線香の香りがいつになく印象的だ。
この夏ほど、思い出深い夏は無い。ヒグラシの鳴き声が心地いい夏は、とんと暮れていく。生涯、忘れることは無いだろう。こうして、この高二の夏が人生で一番アツい夏となった。
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