浮気問題の犯人、天使と悪魔の純愛

 1546年、晴信は必死に手紙を書いていた。胸鰭で。そこに悪魔たちがやってきた。

「晴信さん、何やってんすか?手伝いましょう」

「やめろ!わし、かなりやらかした」

「何を?」

 晴信はひそひそと話した。それを聞いた悪魔たちは、アスモデウスに視線を向けた。

「多分あんたのいたずらだろう」

「そうだな」

 甲田信敏が未来から戻ってきた。

「騒いでるけど、なんかあった?」

「なんでもない!それより、何か古生物を襲いに行かないか?」

「そこら辺の川に住んでいるプルスサウルスでも食べたいな」

「あなたは食べることに目がない、暴食を司る悪魔というだけあって」

「そうだよ!まだ生きているかもしれないメガロドンを完全に滅ぼし、その刺身を食うことが俺の夢だ!」

「そんなことを言う悪魔は初めて見た。まあ、プルスサウルスを襲いに行こう!」

 信敏、悪魔を連れて川に行った。

 一方、今川館。

「あおいが浮気をしていると言う噂を聞きましたわ!本当なのですか?」

 今川義元の母である寿桂尼、

「甲斐国に住み着いた悪魔どもの仕業でしょう。武田晴信殿は、なぜ悪魔を飼うのでしょうか?」

「晴信殿自身も悪魔だからです。晴信殿は、悪魔の名を冠したクジラに変貌しました。それ故に仲間と一緒に暮らしているのです」

「そんなことがあったのですね」

 信敏と悪魔たちは、巨大なワニを襲っていた。全長13mのワニである。ルシファーが魔法の力でプルスサウルスを一撃で仕留めてしまった。

「おーすごいな!大悪魔の手にかかれば、こんな巨大な捕食者でさえイチコロなんだな」

「メガロドンに対してはこの魔法は効かないかもしれない。メガロドンは完全に海で暮らしているため、泳げない悪魔たちは殺される」

「っていうかさ、なんでメガロドンはあんなに有名なの?リヴァイアサン・メルビレイは歴史の表舞台にちっとも出てこない、メガロドンより強かったとも言われているのにね。そりゃ嫉妬の悪魔の名がついてもおかしくないよ」

「映画とか物語とかでも、メガロドンは活躍してリヴァイアサン・メルビレイはその影に隠れてしまうどころか、全く出てこない。リヴァイアサン・メルビレイはさぞメガロドンに嫉妬しているだろう」

 ルシファーは突然こう言った。

「私の敵は、もはや神ではない。メガロドンこそが私たちの真の敵だ」

「なぜだ?」

「リヴァイアサン・メルビレイの敵討ちだ。それが私たちの使命だ。私が最強の大悪魔として、仲間の無念を晴らさなければ!」

「その思い、よくわかったぜ!俺たちも、あんたに協力するぜ」

 信敏はルシファーの手を取った。

「信敏?」

「俺と共に、あの巨大ザメを討とう!」

 ついに、信敏は背伸びをした。そして信敏とルシファーはキスをした。ベルゼブブはヒューヒュー言っている。アスモデウスはこう考えた。

(こいつら、わしの計略にはハマることはなさそうだな。わしはこういう純愛は苦手だからな)

「何考えてんだ?」

「いや何も。少し思うことがあっただけだ」

「それにしてもプルスサウルスの肉はうまいな!捕食者の肉は最高だ」

「メガロドンにも同じことが言える。肝臓は脂がのっていると思われる」

「でもサメは、アンモニア臭いんじゃないか?」

「アンモナイト?」

「アンモナイトじゃなくてアンモニア!強烈な匂いを発する物質だ」

「アンモナイトの肉も食べたいなあ。どんな料理がうまいんだろう?」

「ハエのくせに人間の食い物も食えるんだな」

「食べることが大好きだからな!」


 高坂昌信は、晴信を睨んでいた。

「お館様、このような噂を聞きました!ほかの男と浮気していると」

 晴信はすぐさま手紙を渡した。そして逃げていった。

「え?弥七郎には何度も言ったけど、腹痛のせいで認めてもらえなかった?」

 信敏、

「これさ、絶対アスモデウスのいたずらじゃね?あいつは、男女の関係を上手くいかないようにすることが得意な悪魔だからね。男同士でもそれがありえたっていう話。そもそもあいつ、旧約聖書の中では初夜とかいう下ネタを...」

「やめましょう。わたくしは下品なことは嫌いです」

「それは、あいつに言ってよ。あいつは、七つの大罪における色欲を司る悪魔なんだから。あいつ近いうちに死ぬかもね、処刑とかで」


 次の日。信敏の予想通り、アスモデウスは晴信から切腹を言い渡された。もっと大変なのは、信敏が介錯の役をやれと言われたことである。アスモデウスはこう言った。

「ルシファーとお前を手にかけることだけはできないな。悪魔と天使という、正反対の立場でありながら恋に落ちた。その愛は誰よりも強いはずだ。きっとお前たち2人は絶対に浮気することがないだろうな」

「その言葉、褒め言葉として受け取っておこう。地獄で私たちの活躍を見ていろよ」

 アスモデウスは脇差を鞘から抜くと、脇差を腹に突き刺し、首のほうまで引っ張っていった。

「介錯は武士の情けだ、俺に出会ったこと、地獄で誇りに思うがいい!」

 信敏はそう叫び、震える手でアスモデウスの首を切り落とした。

 そんなことを知った越海景友は、

「御実城様、アスモデウスとかいう悪魔が死んだようです」

「敵が減ったか!しかし残りの悪魔たちも恐ろしいのであろう。油断はできぬ」

「悪魔を警戒してまいりましょう!」

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古生物侍 齋藤景広 @kghr

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