ひかり

 夜の砂漠を一頭のらくが進んでいく。

 鞍をつけて乗るのは面紗ヴェイルをかぶる娘で、手綱を握る手の十の爪はちいさな銀色に輝き、しっかりとその両眼を閉じている。

 駱駝を引くのは身体の大きな男で、その顔や腕には獣のような毛とひげがあり、ぴんと立った耳があり、腰のあたりにはふさふさの尾が緩やかに揺れていた。

 男は時折、鞍上の娘に話しかける。娘も何か答える。

 砂漠の真ん中まで来ると男は平たい砂の上に敷物を敷き、駱駝から抱き下ろした娘をそこに横たえた。


「いいか、ヨン」

「いいよ、シルファ」

「よし、じゃあ目を開けて」


 ああ、と娘は感嘆の声を上げた。

 夜空には、青絹からあふれてこぼれ落ちるかのような満天の星空が広がっている。

 ヨンは、隣に寝転んだシルファと手を繋いだ。傷痕だらけのその手は毛むくじゃらで温かい。

 綺麗だろ、と言ってくれるこの狼が私の光だ、とヨンは思った。











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星の砂漠で狼と 鍋島小骨 @alphecca_

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