新生活

第1話

シトシトと雨が降りしきる中、僕は街の中を歩いていた。今日からこの街に住み始める僕は新しい生活に心を踊らせながら昨日地元を出た。そんな僕の心とは裏腹に朝起きると雨が降っていた。

(今日から新生活なのに雨なんてこれからやっていけるのかな...)

そんなことを思いながら進んでいく。来週からは新しい職場での仕事が始まるため、生活に必要なものを早く揃えなくてはいけないのだ。商店街に入り、衣服や食料品を買い揃えていく。雨が降っているせいなのか人通りは少なかった。それでも商店街の人々は明るく、沈んでいた僕の気持ちも少しずつ明るくなってきていた。一通り買い物を終わらせ、マンションに帰ろうとしていたところ。

「お兄さん〜！コロッケ買っていかないかい？」

そう言われ、呼ばれた方を見てみると肉屋のおばさんがこちらに笑顔で手招きをしていた。そこには『おふくろのコロッケ　150円』と書いてあり、ホクホクのコロッケが沢山売られていた。気になった僕は呼ばれるがまま店の方に行きコロッケを買った。渡されたコロッケは出来たてでやけどしそうなほどだったが、外はサクサク、中はホクホクで優しい味をしており、昔母親が作ってくれていたコロッケを思い出した。コロッケを食べながら商店街を出ると降り続いていたはずの雨が上がっていた。

青空が広がる空を見上げると、虹がかかっていていることに気づき、嬉しくなった。そして虹をスマホで撮ってお守りのようにホーム画面に設定した。

「この街でなら頑張って行けるかもな」

虹を見上げながらそんなことを呟き、僕は軽い足取りで雨上がりの街、マンションへ帰って行った。先程までの不安が吹き飛んで言った気がした。