桜の樹の下に恋をした
ロコモコもこ
その下には
春の訪れが近づくと、村の桜の樹の下は人々の憩いの場所となり、皆がこの美しい景色を楽しんでいた。しかし、桜が満開になると、一つの奇妙な噂が村の中で囁かれるようになった。それは、この樹の下に埋まっている「死体」の話であった。村の小さな家に住む少女、和香は、この噂を聞いたときから興味を持っていた。彼女は周囲の無関心とは裏腹に、その死体の存在が気になって仕方がなかった。ある日、和香は決心し、桜の樹の下に向かうことにした。
木々がざわめき、花びらが風に舞う中、彼女は足元に目を向けた。木の根元には古びた石があり、その下に何かが埋まっているような気配があった。和香はその石をどけてみると、そこには朽ちた棺が埋まっていた。心臓が早鐘を打つ中で、彼女は棺の蓋を開ける決心をした。古びた木の蓋がきしむ音を立て、和香は中を覗き込んだ。棺の中には、今もなお静かに眠る青年の姿があった。彼の顔は穏やかで、まるで深い夢の中にいるかのように見えた。彼の髪は長く、静かに肩にかかっており、その姿に和香は驚きと同時に奇妙な感情を抱いた。それはただの興味ではなく、心の奥底から湧き上がる何か、言葉では表せない感情だった。和香はその夜、夢の中で再び青年と出会った。夢の中で、青年は彼女に微笑みかけ、優しく語りかけた。
「私が眠っている間、どうしてこんなに気にかけてくれるんだい?」
和香は目を覚まし、その夢の中での出来事が現実のものとなり、次第に青年に対する強い感情が芽生えてきた。彼女は桜の樹の下に通い詰め、青年と語り合うようになり、その深い瞳に引き込まれていった。彼と過ごす時間が、彼女にとってかけがえのないものとなり、彼女の心は次第に彼に恋をしていった。
春が過ぎ、夏が来ると、和香はますます青年との心のつながりを深めていった。彼女は桜の樹の下で独り言を言い続け、彼との会話を繰り返し、村の人々はその奇妙な行動を不思議に思っていた。しかし、和香にはその全てが意味のあるものに思えた。彼女は自分の心の中で、青年との恋愛を育てていた。ある日、和香は青年に約束をした。「私がこの村を離れる時、桜の樹の下で最後の言葉を告げるから、それまで待ってて。」青年は微笑み、その言葉を受け入れるかのように見えた。
年月が流れ、和香は村を離れることになった。彼女は最後に桜の樹の下に戻り、青年に別れの言葉を告げた。
「ありがとう、あなたのおかげで私の人生は変わった。またね。」
その夜、和香は桜の樹の下で静かに眠りについた。翌朝、彼女はその場所に横たわっていた。村の人々は驚き、彼女が眠る桜の樹の下を訪れた。そこで彼女と青年の姿を見つけ、彼らの物語が村中に広がった。桜の樹の下には、今もなお二人が静かに眠っている。彼らの愛は、春の桜の花と共に村の伝説として語り継がれたが、その姿は誰の目にも映らなかった。
桜の樹の下に恋をした ロコモコもこ @mokomoko1182
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。桜の樹の下に恋をしたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます