第2話 事件と解決編!…を書く二人
翌日、昨日の動画に写っていた女子高生、望々さんは行方不明になっていた。
「おいおいおいおい! どういうことだよ、昨日のは真っ赤な動画じゃなくて殺されたってことかよ…」
真っ赤な動画というのは多分『真っ赤な嘘の動画』、フェイク動画という意味だろう。
しかし、僕も粗々くんに同意だ。
「警察には動いてもらってるんだよね?」
クラスの皆が僕のことをじっと見つめる。
港々くんが諭すように、驚くなというように話しかけてくる。
「宮々、この島には、警察が居ないんだ」
警察がいない?そんなことありえるのだろうか。
「な、なんで?」
「それは俺にもわからん。」
「この島で起きた事は、全部俺たちが解決しなきゃいけないんだ。」
粗々くんがそう言った。
「まずは
なんだか軽そうな男子がそう提案してきた。
粗々くんも同意し、今の状況を話し始めた。
「望々は2階の教室、昨日の映像と同じ場所で首を切られ多分殺された。血の跡がべったりと着いてた。椅子と床に」
皆んなが2階の現場を見に行く。
そこには、1つの椅子と飛び散った大量の血があった。
「んー?血だけじゃなんもわかんねぇよ!
頭が真っ赤になりそうだぜ」
粗々くんはそう唸る。
...だが、ここにはわずかな違和感がある。
まず1つ目は、血がこんなに飛び散るか、と言うことだ。
実際に首を切られている現場を見た事はないが、動画ではこんなに飛び散っているようには見えなかった。
この飛び散り方は、なんだかもっと高いところから落とされたような感じだ。
そして2つ目は、椅子の位置が微妙にずれている気がすると言うことだ。
もう少し右寄り...だった気がする。
まだこのことからは、何も分からない。もう少し探してみるか。
すると、血に何かが浮いている。
木の粉だ。元々ここで木などを切って、散らばっていたものだろう。
「ちょっと周りの教室も見てきていい?」
一応、いきなり居なくなる訳にも行かないので粗々くんに聞く。
「ん?おう」
他の教室には特に何もない―
「何だこの教室」
物が色々置かれている。布やハシゴ、脚立、文化祭の道具らしきものから学校でよく見るスポットライトなどホコリ被っている。
特に何もない、か。
―一旦みんなが教室に戻る。
「
まず、港々くんが話し始める。
「俺は粗々の部屋で
「そうそう、それで港々がめちゃくちゃ
今喋っている軽そうなやつが軽々、真面目そうなメガネの長身男子が席々というらしい。
「あぁ、だから俺たち男には絶対にできない」
絶対、か。
来々さんが次に口を開く。
「私達は、津々とカフェに行ってた」
「うん、みんながそう言ってる」
この島にそんな店があったとは。
「私と浦々さんは一緒に図書館に行って...ました」
津々さんと浦々さんは双子なのだろうか?
とても容姿が似ている。
「宮々は島にいないから違う」
僕は頷く。
本当かどうかは分からないがこれで8人、アリバイが成立した。
ここにいるのは9人、8人と言うことは必然的に1人余るということになる。
最後に残ったのは―
「
「ん、ボクは、、、砂浜、浜辺、海岸にいた。」
「ふらついてたってことだな。それは誰か見ていたのか?」
「多分...見て〜...ない」
こうなると、最後に残った不気味な子、過々が犯人ということになってしまう。
だけど、これで合っているのだろうか―?
何故か頑なに会話間に消えないなにか違和感がある。
―その瞬間僕の思考が始まり、試行し、嗜好する。
なるほど、確かでは無いが謎はおおよそ解けた。
「皆んな、一昨日の朝はどうだったの?」
「朝? なんでそんなこと―」
「朝か、それなら俺と粗々と軽々が一緒に登校した。その時には既に女子は望々以外は揃っていた」
粗々くんを遮り港々くんが説明してくれた。
とても助かる。
「うん、私達も同じ感じで祇々と過々がいたかな」
「私は祇々が1番に出てったの見たよ!みんながそう言ってる」
なるほどだとするとこの中で、『朝』のアリバイがないのは、席々くん、ということになる。
「そういえば席々は遅刻、望々は欠席だったっけ?」
「体調が悪くてな」
「体調が悪かったわけじゃない。そして、望々さんも欠席した訳じゃない。」
―来れなかったんだ。
「どういうこと? 朝に何かあるの? 起きたのは夕方だよ」
来々さんが変なものを見る目で僕を見つめる。
「いいや、動画では夕方だった。たけど、実際は朝だったんだ」
「なんで?」
「宮々、説明してくれ」
僕は頷く。
「まず、多分だけど犯行現場は2階じゃない。3階だ。そして犯人はカーテンを閉めてスポットライトをオレンジ色のシートで覆いかぶさり、廊下から照らすことで夕方にみせた」
「それで夕方に見えたって言うのは何となくわかるんだけど2回じゃないってのはなんなの?」
「それは―まず3階に行く必要がある。あの教室の真上のね」
―皆んなが3階の教室に集まる。
そこには1つの椅子、それだけがあった。
「椅子しかないですよ? 何が犯行現場なんですか! みんながそう言ってる!」
それは津々さん、あなたしか言ってない。
「確かに椅子の血は綺麗に吹いたかもしれないけど―」
僕は教室の床、正方形の木の板を1枚外した。
「えっそこ外れるの!?」
「犯人が外したんだ」
その下には、血の跡がベッタリと染み付いていた。そのまま僕はその血を辿るように板を外していく。
するとたどり着いたのは、ロッカーだった。
「恐らく、この中に望々さんはいる」
ロッカーを外すと中には首に見るに堪えない傷を負った望々さんがいた。嗚咽を交えて泣き崩れる人もいた。そして、青ざめる人もいた。
「じゃあ下の血はなんだったんだ!」
粗々くんが声を荒らげて僕に聞く。
僕は黙って他の板を外す。
そこには血では無い、丸く切れ込みの入った床があった。それを取り外すとまた板があり外していくと、2階の血の着いた椅子がよく見えた。
「なるほど...ここから血を垂らして椅子に当たるようにしたんだな。すると、望々は2回切られたってことか」
「そういうこと。なかなかやるね、港々くん。こうすれば首を切られて死んだと思われていた望々さんが2回も切られたなんて分からないし死体は後で捨てればいい。1回目は3階で、2回目は2階に垂らすために切りつけたんだ」
「本当だ...胸に切傷がある」
そしてこれができるのは朝にいなかった、席々くんだろう。
「席々、お前朝に望々を呼び出して殺したってことか?」
「...だったら?」
「なんでだよ! 俺たち家族みたいなもんだろ」
「だからだよ!...俺があいつに告白したらあいつは『私たち家族みたいなものだから』って」
「だから殺したのか」
港々くんも詰め寄る。
「この島の掟、忘れちゃねぇよな」
「そんくらい覚悟の上だ」
そう、この島にはひとつの掟がある。
僕もここまで送ってきてくれた船の人に教えて貰った。
『人殺す者、殺される者である』
つまり、死刑だ。
―翌日、席々は首吊り自殺で自ら命をたった。
誰かに殺されるより自分で死ぬほうが楽だったのか、皆んなのことを思ったのだろうか。
◇
「宮々ぁ俺はこんなことがあるなんて知らなかった。感情がここまで人をおかしくするなんて」
「『恋愛』って言葉には心が2つも込められてるけど少し組みかえるだけで『変』って漢字にもなるんだよ」
「真っ赤だけじゃ言い表せない感情だぜ」
粗々くんは少し目元を潤わせている。
「『冷酷で鋭い真っ青な真実よりも、情熱的で柔らかい真っ赤な嘘』ってことかな」
粗々くんは何も言わない。
入学2日目、生徒は2人減った。とんだサプライズだ。
二重ドッキリと逆ドッキリには気をつけなければ―。
―的な感じでどう?
「うん。今回もいい感じだな!」
放課後の教室に居たのは前回と同じ、麦と俄という2人の女子中学生だった。
「でもさ、あの〜軽々だったっけ?軽そうなキャラ」
「うん。そうだよ」
「なんであんなルビの振り方するの? めっちゃ読みにくない?」
「いや、あれは『余計なことまで言っちゃう』っていうキャラを、『いらないルビ』をつけることで『いらないこと言うキャラ』を表そうと思ったんだけどなー.....読みにくくなっちゃった」
「発想は面白いと思うけど、、、」
歓談で閑談な2人の会話は間断されることなく続く。
「西尾維新の『カッコつける』と『括弧つける』の語呂合わせみたいな」
「麦ちんにはそこまでの文才はなかったみたいだね。西尾維新と自分を並べるのはおこがまし過ぎたんだよ、ドンマイ」
「寸程も心がこもってない慰めありがとう」
「おぉ! 角の取れた丸い石だね!」
「そこは流れる石と言ってくれ!」
「じゃあこれを投稿するか!」
「ラジャ」
2人は【公開】ボタンをタップする。
そして、下校する。
「でも馬鹿でもあんなトリック思いつくんだね〜」
「ぬ! 意外とそこら辺にミステリーなんて転がってるよ」
「例えば?」
「キセル乗車とか。ネタ知ると『あ〜なるほどな〜』ってなる」
「なるほどねぇ」
「ぷぷっ」
「どうしたの麦ちん」
「キセル乗車の罪を他人に着せる乗者なんつって」
「丸石のようだね!」
「そこは流石と言ってくれ!」
⤵︎ ︎続く
次の更新予定
隔週 日曜日 19:00 予定は変更される可能性があります
語り部:々の二人 子子ノ子 子子子 @HASAMI8331
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