主人公の、作者様の。『夏』への確固たる意思を、ご覧ください。

 影が怖い。特に、人の影が。
 本作の主人公は、そう感じておりました。
 怖いと感じたその理由とは。
 それを、なぜそうであるのか、をすぐに想像できる人と、そうではない人。
 本作は、読み手がしぜんとこの二つに分けられていく作品です。

 それは、どちらが正しい、正しくない、ではなく、生まれた地域、時代、教育。様々な理由によるものです。
 だからこそ、本作の主人公は、それを否定するでもなく、肯定するでもなく、ならば、伝えればよいという姿勢で立ち向かう決意をいたします。

 そして、本作のラスト近くには、主人公の確かな動きがございました。

 影の怖さに立ち向かうだけではなく、なぜ影の怖さというものが生じたのか。
 二度と影への怖さを生ませてはならない、それを伝えていく。
 自分には、仲間には、その手段があるのだから。
 この結論は、誰に言うでもなく、主人公が見つけたもの。読み手からしましても、大いに納得がいくものです。
 最後まで拝読をしましたこと、それが、そう決意をした主人公への読み手からの声援になればよい、と思わずにはいられない作品でした。

 初読の方も、再読の方も。

 皆様、どうぞ、主人公と、作者様の『夏』をご覧ください。
 

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