忘れてもいい。けど、知っていなければならない。

影が苦手だという主人公。何故なのか。読み進めていくうちに不安感が肥大していきました。はちきれんばかりに膨らんだ不安感は最後には弾け、切なさに、そして希望へと移り変わっていきます。

重い話なのに、すらすらと読ませる筆力。さすがです。身近にある音楽が緩和剤として使用されているのが良いんでしょうね……。なんて素人ながらに思いました。兎に角素晴らしい物語でした。

最後に、この物語を拝読して。

辛い記憶は無理に覚えておく必要はないと思います。時には忘れたっていい。

でも、知っていなければならない。
誰かがその想いを伝えていかなければならない。

誰かが涙をこぼしていた時間があったことを、苦しすぎて涙さえ出なかった時間があったことを、誰かに届けなければならない。繰り返さないために。

わたしたちは、赤児に戻ってはいけない。
過ぎ去った時間は、二度と戻らないから。


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