夕方の空が綺麗だなあ
色葉みと
夕方の空が綺麗だなあ
確か、小学3年生の秋頃だったっけ?
朝夕はかなり冷え込む時期、その日は晴れていてとても過ごしやすかったのを覚えてる。
それで……、学校が終わった後に学童クラブの友達と遊んでたんだよね。もちろん、宿題を終わらせた後に。
なわとびやケイドロ、一輪車なんかもしてたかな。……まあ、私は一輪車には乗れないから見てるだけだったけど。
しばらく遊んだ後「次何して遊ぶ?」ってなったから、私はぶらんこを提案してみた。見事その案は採用される。
ぶらんこに乗ると、誰が一番早く高いところまでこげるか競争が始まった。すぐに決着はついたんだけどね。
で、今度は変な体勢でぶらんこをこぐ選手権が始まる。
最初は見てるだけだったけど友達が楽しそうにこいでたし、なんか大丈夫そうだったからやってみることにした。
友達の真似をして、ぶらんこの鎖を握る手を伸ばし、後方に体を倒す。大人に見つかったら絶対に止められるだろうな、なんてことを考えたっけ。
いつもとは違って空がよく見えるこのこぎ方は思った以上に心地よくて楽しかった。
ついうっかりしてしまうくらいには。
——体が浮いていた。
夕方の空が綺麗だなあ、なんて
ズサッ!
——世界が暗転した。
コンマ1秒後にはいつも通りの世界があったけど。
何が起きたのか分からず呆然としている私の周りに、友達と何かを察知した学童クラブの先生が集まってくる。
心配そうに「大丈夫?」と声をかけられ、私はゆっくりと起き上がった。
たぶん大丈夫だと答えると、張り詰めた空気はだんだんといつもの空気感に戻っていく。
背中と後頭部が痛いことに気づいたのはそれから少し経った後。
母が迎えに来た時、先生は「〇〇ちゃん、今日も楽しそうに過ごしてましたよ」と、笑顔で語る。
私から母に何かを伝えることもしなかった。特に言わなくてもいいことだと思っていたから。
数日後、いつの間にか背中と後頭部の痛みはなくなっていた。
夕方の空が綺麗だなあ 色葉みと @mitohano
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