第3話 代わり映えのしない日常

 わたしは今日も昨日と同じ時間を過ごすために学校へ行く。


歩いて20分…

今思えばもう少し遠くの学校にすれば良かった…


「はあ…」

溜息混じりに靴箱から上履きを取り出して履き替える。

靴箱の上に乗せておいた本から表紙の裏に挟んでいた栞が靴箱の向こう側へ飛ばされた。


朝からついてない…


仕方なく反対側へ回ると、『うわっ!』同級生が靴箱の陰でイチャコラしてるところを目の当たりにしてしまう…


一瞬固まったわたしは男の方と目があった。栞は諦めて自分の靴箱に戻る。


『朝から気分悪っ!』


カバンと本を持って教室に向った。


自分の席に座り、授業の準備をしてると、さっきの男女が教室に入ってくる。

ベッタリくっついて…


わたしはこの男、高嶺蒼生たかみねそうやが大嫌い。

二年に上がりクラス替えで彼を見た時、この世の終わりかと思ったくらいだ。


彼は顔こそソコソコなのに、口が上手く、調子が良くて何故か女の子に人気がある。

それを良いことに女の子を取っ替え引っ替え遊んでいる犬畜生にも劣るヤツだ。


こんなのと一年間一緒のクラスかと思ったら不安要素しかない…


因みに、ここで言う不安要素とは、別にわたしが彼の毒牙にかかるかも…なんて事ではない。

中の下にいるわたしの容姿など、彼からしたら女の子のウチには入らないだろうから。


わたしが嫌なのは、ベタベタチャラチャラと見苦しい行いを見せつけられる不愉快さだ。


誰が誰と付き合おうが構わないが、来るもの拒まず、誰とでもOKな、正に下半身が服を着てる様なあの男はいただけない…


わたしの好きな本は恋愛もの…

学園ものから勇者ものまで何でも読むが、絶対に譲れないのは主人公とその相手は唯一無二の存在である事!


お互いに信じ合い、愛を育む…

その深い愛情は自分だけに向けられる…

決して裏切ることの無い永遠の愛なんて…

わたしには夢にも巡ってこない出来事だが、だからこそ憧れる…


なのに! なによ!

最近は転生物ばかり大流行だし!

しかもハーレムだって?!

ふざけんじゃないわよ!

あっちでも、こっちでも、種まいてる姿がカッコ良いとでも思ってるのか?


あ~〜〜 胸糞悪い…


今日はカラオケ行こう…



わたしは学校が終わると一旦家に帰り、着替えて出かける。


『カラオケ、カラオケ!』


今日は朝から嫌なもの見ちゃったし、化学の班でも高嶺と一緒だったし最悪だった…


わたしはいつものカラオケ店でその鬱憤を晴らすべくフリータイムを歌いまくった!


歌って、歌って、歌って、歌って、歌って…


あっと云う間の6時間が過ぎていく…



「ありがとう御座いました〜」


「お疲れ様です!今の部屋片付けて来ます」


「頼むわ〜 5番の部屋〜」



俺は5番の部屋に入る。

お盆にコップと温かい飲み物用のマグ、それに使ったマイクが置いてある。


今出て行った女の子…

同じクラスの宮本志摩だ。


『そういや、今日は朝からアイツに会ったな…』


履歴をリセットしようとしたが、まだログインされたままな画面につい目が行った。


【しまみん】

可愛いハンドルネームに思わず笑っちまった…


履歴は…っと…へっ?!

アニソンと特撮ばっか!


「ぷっ!」

アイツ…大人しくて根暗なヤツだと思ってたけどオタクだったのかよ!


よくもまあ…6時間もこんな歌ばっか歌えるよな…


しかも…【しまみん】ねぇ…



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チャラ系男子とアニオタ女子 ねこねこ暇潰商会 @driss

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