自動販売機に目出度い
夏の暑い熱帯夜、いかがお過ごしですか?
私はいつもの様に新聞配達です。雨だろうと台風だろうと雪だろうと地震だろうと大抵休まず配達中。
新聞配達にとって…と言うか足の遅い私にとっては自動販売機と猫は切っても切れない間柄。
喉が渇くので給水ポイントとして自動販売機は有り難いし、一人淋しく配達していると野良猫との交流が恋しくなる…
東京の下町になると結構ゆるいのか野良猫が居ます。おまけに人馴れしているのでこちらからチッチッチと呼びかけたら暇な子は相手をしてくれます。
故に私は配達が遅いです。目こぼしされていたのはそれ以外で不祥事、飲酒等をしていなかったからでしょう。
新聞配達は過酷なのです。借金のカタに新聞配達にぶち込まれた人も居ます。
そんなギスギスした中で猫は癒しでした。
今日も魔の消防団地へのアタックが始まる。消防団地は配達の後半に当たるのでここを過ぎればなんとかなる。ジジに会えない寂しさを除けば。
消防団地内の自動販売機前に差し掛かると沢山の黒い毛玉が居ることに気がついた。
その毛玉は黒毛の子猫達。その子猫達はなんと「尾頭付きの鯛」に齧りついていたのです。
そして私を視認すると鯛を取られてなるものかと一致団結して引き摺って行ってしまいました…
「にゃ~ん」 フゴフゴ
懐かしい声がする。
自動販売機の影からジジとマイケル君が顔を出しました。
お前達…妊活中だったからお留守だったのね…
夕刊配達の時に以前のお母さんから話を聞きました。黒毛の子猫達はやはりジジとマイケル君の子供で、尾頭付きの鯛は住民の誰かが差し入れしたのではないかとのこと。
「夏仔みたいだから元気に育って欲しかったんでしょう」
そうお母さんは言い、住民の大半がジジを地域猫として見守る姿勢でいるとか。
秋口に差し掛かる頃には体もしっかりして来て木登りから階段の駆け上がりまでヤンチャの盛りです。
結局ジジは子育て中ともあって相手をしてくれなくなったけれども。
「上手く使われたなぁ」
配達で嫌でも目に付く私を広告塔に野良猫から地域猫に認識が変わり、今ではジブリ映画そのままに赤い首輪もプレゼントされた模様。
子供の為だったのか分からないが兎に角母は強し…という事か。
今日も自動販売機で一服するたびにその夏の出来事を思い出します。
終わり
大切なあの子 太刀山いめ @tachiyamaime
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