マイケル君現る

 早朝の新聞配達。魔の消防団地にて。


 私は少し余裕が出てきたので持ち運び可能なペットボトルから缶コーヒーにシフトし眠気を払いつつ「ジジ」を待っていた。


「今日は来ないのかな」


 そう思うと早朝3時一人で自動販売機の明かりに照らされているのが物寂しく感じる。

(まるで誘蛾燈だな)そう思っていると…


フゴフゴ…フゴフゴ


 耳慣れない音がする。深夜早朝になんだろう怖いなー怖いなー。


 自動販売機の明かり迄来たそれはアカトラの猫だった。首輪が無いので野良猫だろう。

 その影になるような位置からジジが出てきた。

「おはよう」

 そう呼びかけると普段なら擦り寄ってきてくれるのだが今日は様子が違う。

フゴフゴアカトラと並んで座り、アカトラに取り掛かる様に首根っこを押さえて無理矢理「礼」をさせる。


「…もしかして…ジジの恋人か?」

 そう聞くとそうだとばかりに「にゃ~ん」と鳴く。だが喉は鳴らさない。あくまで「礼」をしているかのようだった。


「ジジは良い女だもんなぁ」


フゴフゴ…フゴフゴ


 昔読んだ漫画にホワッツマイケルだったか?アカトラが出てくるのが有った。なのでまたも安直に。


「宜しくマイケル君」


フゴフゴ


 その日から暫く一人で朝刊夕刊配達をする事になった。

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