ジジを取り巻く人々

 魔の消防団地にて。夕刊配達の時。


「あ、ジジだ!」

 幼稚園生位の男の子がそう言ってお母さんとやって来た。


「配達お疲れ様です」


「あ、有難うございます」


「ねー、ジジ触らせて」


 私がいつもの様に配達していると黒猫野良の「ジジ」がまた来てくれた。そしてまた5棟アタックを決行したのだが途中で走れなくなってしまい、いつもの様に肩にジジが乗って励ますと言う状態に。


 それを見た子供が「ジジ」と読んだのだ。聞いてみると「魔女の宅急便で見たもん」そう言っていた。やはりジブリか。人の事は言えないが。


 そして魔の消防団地もアタック終了なのでジジを抱っこしてその子供に近づけた。猫は子供が苦手と聞いていただけに引っ掻いたりしないか心配でお母さんに目配せをしてジジを下に下ろした。


 「ぐるぐるぐる」

 ジジは慣れたように横になり喉を鳴らし始めた。


 子供は歓声を上げながら優しく撫でる。


「ジジで良かったかしら?配達しながらお兄さんもそう呼んでたから…」 


「は、はい。私は勝手にそう呼んでます」 


「自治会でもこの子の事が話題に上がったんだけど、お兄さんと仲良しだし子供にも襲いかからないからこのまま様子を見ようってなったのよね」

 そうお母さんは言う。野良猫である事に変わりはない。いつ処分されるか分からないんだ…


(こんなに優しいのにな)


 モヤモヤしながら配達に戻った。



「お疲れ」

社員さんが出迎えてくれた。販売所の入り口に誰でも買える自動販売機が設置されていて社員さんはそこでよく空き缶片手に一服していた。


「もう配達には慣れたかな?少しは帰りが早くなったね」

 そう言いながら自販機にチャリンチャリンと小銭を入れる。ボタンを押すとゴトンと缶コーヒーが出てきた。


「お裾分け」

 そう言って缶コーヒーをくれる。


「?、有難うございます。でも何かしましたか?」


「消防団地で新しい契約がとれてね」


「はい」


「猫のお兄さんに宜しくだって…心当たり有るでしょ?」


「あー、はい」


「あんまり猫と戯れて配達が遅れても困るけど…ま、今回はね」


「気をつけます」


 ジジは新たに私の仕事を増やした様だ。

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