第34話 茨木童子の生まれ変わり
路地裏の暗がりでイチャイチャしてるカップルがいた。ちっ!
リア充死ねよ!!
と念を飛ばしつつ、その場から去る。
今頃イチャイチャ盛り上がっているんだろうね。くっ!別に私もイチャイチャしたーい!…とかじゃないけど!
でもどこにいるの?あいつは…。
はぁ…別に会いたいなんてことはないけど今世のどこかに居るはずなのにね。
まだ私は今世ではあいつと会えていない。何度か生まれ変わりを繰り返してはその度に恋に落ちるのは仕方のないことだけど。何でいつも私の方から探しに行かないといけないのか!!?
たまには向こうから見つけに来てくれてもいいのに!!
そこに影から痛々しい怪我を追った双子が出てきた。
「金熊童子に石熊童子…あんた達まだいい身体見つけてないの?」
「せやかて…まだ昼間でっせ、姐さん…。俺ら昼間は影でしか移動できんねん」
「情けない奴等ね。それでも四天王の1人なの?金熊童子!まぁ、四天王の中でも最弱だけどね!そんなんだからよく分からない鬼女なんかにやられんのよ!」
「…………」
「姐さん、あんま兄さんを苛めんといてや?あんたみたいに生まれ変わってないんやワシら。裏鬼門からようやく出て来たばっかりやから…力だってあんまり戻ってないんや…」
「それよりあいつを探すの手伝ってよね!全く!何だって私があいつを探さないといけないわけ!?向こうから見つけにくるのが礼儀よね!?いつもいつも!」
「まぁ、姐さんが必死なのも判るで。旦那さん生まれ変わってもいつも美形やろ?んでもって女遊びばっかりしなはるしな!」
と金熊童子が聞くと
「は、はあ??何で私が必死にならないといけないわけぇ?ふざけんじゃないわよぉ!向こうから必死になるならいざ知らず!もういい!そんなに言うなら見つけなくったっていいんだからね!?誰があんな女にだらしない奴追いかけないといけないわけ!?」
「流石…茨木童子…の生まれ変わりやな姐さん。旦那に対するそのツンデレさ!やっぱり姐さんは旦那にぞっこんやん!」
「酒呑童子の生まれ変わり…一体どこにいるのよ!見つけて女と浮気してたら引っ叩いてやるわ!!」
「にしても…姐さん…奴等陰陽師はどないするんや?まだ酒呑童子様も見つかってへんのにワシらがもし退治されたら…。それに四天王もまだ全員揃ってまへん…。極力遭遇を避けた方が良さそうやな。芦谷のガキも土御神の味方やろ?今は」
「芦谷…の子孫ねぇ…近いうちに挨拶にでも行こうかしら?ねぇ?あんた達も野蛮なことしちゃダメよ?
現代じゃ警察沙汰になったら手に追えないから!一応酒呑童子の友達の子孫だったんだからさ!
そんなことよりさっさと身体手に入れなよ!その気持ち悪い色の身体で街を歩いたらハロウィンでもないのに目立つわ」
「酷い言いようやな?」
「ふん!言われるのが嫌ならさっさと手に入れることね!人間なんていくらでもいるじゃないの!」
「せやかて合う、合わんがあるやろ?ワシらも結構選別してんや。やっぱり…どうせ憑くならイケメンやな!弟よ!」
「ああ、兄さん!解りまっせ!イケメンや!芸能人とかあかんかいな?」
「バカね!そんな目立つ人達ダメに決まってんでしょうが!普通のにしときなさい!どうしても嫌なら野良犬か野良猫にでも入ってな!」
「うわあ!辛辣やあ!姐さん!!」
と叫ぶと2人は影に消えていった。
*
「芦谷くんお疲れ様!」
「お疲れ様っす!お先に失礼します!」
と俺はバイトの先輩に頭を下げた。
「そんなに急いで…彼女でも待ってるの?」
ドキリとする!
「んなぁ!?か、彼女?そんなっまさか!!」
「…………お前バレバレだよ。すぐ顔に出るよなぁ。まぁハーフでイケメンだしいいよなぁ!俺も彼女欲しいよ!んじゃな!」
「はは…」
と俺は微妙に帰り支度をした。
スーパーに寄り、半額弁当を漁るけどあまりロクなモノが残っていなかった。
「月末まで保たせないとな…」
イドミにもたまには良いもの食わせたい…。
スーパーを出て、ボロアパートに帰宅したら結界が壊れている!
「な、何事だ!?」
中から何やら凄い鬼の気配がする!!
イドミ!!
俺は階段を駆け上がり、部屋のドアを開けると
イドミが空中で動けなくなっていた。
「イドミ!!」
駆け寄ると…横から見知らぬ人間の男2人が現れた。そして部屋のちゃぶ台で
「ほんと質素なのね…」
と呟いてる女がいた。人間だ。だが、鬼の気配。
「何だ!?お前ら!?ここは俺んちだぞ!?不法侵入だ!出て行けよ」
「静かにしたら?可愛い鬼の女の子の首を折りたくないでしょ?」
「みっ、光邦様っ…」
「イドミ…やめろ!何が目的だ!?」
と言うと女は立ち上がり振り向く。
黒髪は三つ編みで模範的優等生と言う制服だ。
吊り目でクールなメガネをかけている。しかし、狂気というべき鬼のオーラを放っている。
何だこいつ!?強い!!
咄嗟に感じた。
「初めまして?と言うのも変かしら?芦谷堂満の子孫?何でハーフ?ていうか弱いわね、貴方…。だいぶ血が薄れてるんじゃないの?…あ、私は茨木童子の生まれ変わりの人間よ?」
「い、茨木童子って…酒呑童子の…恋人の…」
するとその女は赤くなり
「なっ!何よ!べ、別にあんな奴、恋人とか思ってないしー!わ、私の下僕なんだからっ!」
と言うと横の人間…いやこいつら…
「姐さん、ツンデレるのもええけど話に来たんやろ?はよして?」
「せや、こっちはまだこの身体慣れのうて苦しいんや…」
男達はヤクザ風の風貌の背のスラリとした男と対象に狸みたいな体型の奴であった。こいつらから先日の鬼の気配を感じた!
汗が伝う!
「よお、兄さん。先日ぶりやな!ワシ誰か判る?金熊童子や!」
と細い方が言い、太い方も
「ワシは石熊童子や!ビックリしたやろ?身体あるから!」
「どうでもいい!イドミを離せ!」
「ふん、いいわよ?でも、条件があるの。私、こんな所で手を汚したくないのよねぇ?イドミちゃん?」
そう言うと女はイドミに手をかけボタンを1つ外した。下着がチラリ見えて横2人が興奮した。
「イドミちゃん!セクスィー!!」
「ヤバイなぁ!ワシらも男やねんな!姐さんは胸、絶壁やし」
「う、煩いのよ!あんた達は黙ってな!!………条件って言うのは私達に協力して酒呑童子の行方を探して欲しいのよ?……土御神の子孫より先にね?断るって言うならこの子を貴方の目の前でこの2人に食べて貰うだけね」
「へへえ!旨そうよな!イドミちゃん!」
「仲間食うなんて気が引けるけど、イドミちゃんはどんな味がすんやろ?」
こいつらっ!!
鬼は他の鬼を食うことでその鬼の力を自分の能力として取り込むことができると聞いた。
「さあどうするの?もっとも選択肢なんてないわよ?貴方のことはこの2人に監視させるからそのつもりでいてね?」
「協力したらイドミを食わないでくれるのか?」
「ええ、私のこと何だと思ってるの?人間よ?そんな野蛮なこと…約束を守ってさえくれればしないわ!」
「………判ったよ…酒呑童子を見つけたら…俺達に関わらないでくれるか?静かに暮らしたい」
「ええ、いいわよ?それじゃ、約束よ」
と女は近づく。動けない!!
身体が麻痺したように。
こいつ…本当に強い!!
「ふふ、印を付けておくわ!裏切ったら貴方に死の呪いを!」
と俺のシャツをはだけさせて鎖骨の下にキスする。
イドミが
「ううう…グルルルル!!」
と唸った!
「うっ!!や、やめろぉ!!!」
口を離すと真っ黒な模様が浮かび上がる。
「ふふふ!ちゃんと言うことを聞くのよ?ワンちゃん?」
と言い、
「今日は帰るわよ!あんた達!」
「へい、姐さん!」
「しっかり探せや、ガキんちょ!」
と強い気配が遠ざかる!!
イドミは解放され畳に倒れた!
「イドミ!!」
「み、光邦様っ!」
イドミは泣いている。
「ふぐうううう!あの女!!!殺す!!!」
と仕切りに先程の模様を消そうとするが消えない。
「呪いか…これは俺でも流石に解けない…」
「……あんなに良くしてくれた優平や鈴達を裏切るのですか?鈴…私のこと友達って言っていたです…うっ…」
涙を流すイドミ。水滴が胸元に溢れるのではだけたシャツのボタンを止めてやるとイドミはまだ泣きながら見つめる。
「俺はあいつら…優平達を裏切らない!!恩がある!」
「でも!それじゃ光邦様が死んでしまいます!呪いのことならよく知っているでしょう!?」
「ああ、だんだんこの身体は鬼化して理性を失うだろう…そうなると何もかも判らなくなる。そうしたら俺を退治できるのは優平だけだ」
「嫌…っっ!」
イドミが泣いて抱きつく。俺は抱きしめ返した…。やはり俺は…こいつのこと…。
「イドミ…許してくれ…。酒呑童子を見つけたら俺は死ぬ…見つけなかったら鬼化する。そう言う呪いだ…。
昔御先祖様はこの模様の付いた鬼を倒したことがあると文献に残っている。倒された鬼はその後人間に戻って死体になったそうだ。助かる道はない!」
「嫌です!!嫌です!!優平達に知らせます!」
「ダメだ…そんなの!……これ以上…」
すると俺のスマホが鳴った。
封印から目覚めると鬼娘の私は陰陽師のお嫁になっていました 黒月白華 @shirofukuneko
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