アイ・アム・クローン

@momochi1029

アイ・アム・クローン


「......おお。これが俺か」

「これが俺だよ」


 鏡でもなければ、やまびこでもない。

 毛量の多い黒髪、右下の目尻にあるホクロ、ひょろっとした体型、すべて俺とそっくりなクローンが目の前に立っている。


『ご飯できてるから、降りてらっしゃい!』

「ああ.....わかった! 今降りるからッ!」


 夕飯を作り終えた母さんが階段から2階にある俺の部屋に向かって呼びかけているのが聞こえる。


「じゃあ俺は飯を食ってくるから、お前はその宿題をやっておいてくれ」

「......は? なんで俺が宿題なんてやらなきゃならないんだ?」

「いや、お前を作ったのは俺の代替わりの為だからだよ」

「いやいや、それはお前がやることだよ」

「は? 何を言ってるんだッ!」

「お前こそ何を言っているんだよッ!」


 は揉み合いになる。

 毛量の多い黒髪が揺れて、右下の目尻にあるホクロが赤く染まり、ひょろっとした体型が床に倒れる。


「.......はあ、はあ、はあ。ったく、クローンのくせに歯向かいやがって.....」

『いいかげん降りてらっしゃい! ご飯抜きにするよッ!』

「今降りるからー」


 母さんが作ってくれたご飯を口にする。


「どう? おいしい?」

「うま、初めて食べたわ」

 

 

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