第56話 素晴らしい旅立ち【第一部完結】
俺はゼント・ラージェント。ゲルドン杯格闘トーナメントで優勝した。
俺はグランバーン王との、
そこに、後ろの扉からグランバーン王が入ってきた。
そのグランバーン王は……!
「あ、あなたは!」
俺は目を丸くした。グランバーン王は、俺が知っている人だったからだ。
「わしだよ、わし!」
グランバーン王は、グワシッと俺の肩を
「ワッハッハ! ゲルドン杯格闘トーナメントの優勝者は君だったか! ゼント・ラージェントよ」
「まさか、あなただとは……」
俺は驚いて、呆然となった。
何と、グランバーン王は、マール村の質屋で、俺の子ども部屋にあった本を買い取ってくれた、あの金持ち老人だった。100万ルピーで買い取ってくれたっけ……。
「マ、マール村の質屋では、お世話になりました」
「うむ、あの時は
「まさか、あなたが王様だとは……」
「そのまさかじゃよ! ワハハハハ!」
グランバーン王はワッハッハと笑っている。俺はもう、あの質屋で失礼がなかったか、心配で仕方がなかった。
でも、笑っているから大丈夫か……。
「いや~、しかし、あの質屋にいた君が、この国民的イベントの優勝者か。すごいことだのぉ~」
グランバーン王は豪快に笑い、また言った。
「ゼントよ。ゲルドン杯格闘トーナメントは、全国民が注目する格闘技イベントとなった。セバスチャンの一戦は、大変なことであっただろう。――というわけで皆の者!」
グランバーン王は、眼下の観衆たちに向かって叫んだ。
『この勇気あるゼント・ラージェントに、我が国から
ウオオオオーッ
観衆たちは歓声を上げた。
王の
『では、皆に聞きたい! ゼントへの
グランバーン王が観衆に聞くと、下から、「500万ルピー!」「200万ルピー!」「800万!」「家一軒!」「食べ物のほうがいいんじゃねーのか?」などと声が上がった。
……競売じゃないんだから……と俺はツッコミたくなったが。ってうか、盛り上げ方が上手いな、この王様……。
「それでな、ゼントよ、副賞なんだが……」
「副賞?」
「うむ、君には、ジパンダルへ行ってほしいのだ」
王様が静かに言った。
え? ジ、ジパンダル~?
「で、でも、ジパンダルって、幻の国といわれていて、本当にはない国じゃないんですか?」
俺があわてて聞くと、王はひょうひょうと答えた。
「ん? ジパンダルは最近見つかったぞ」
「は?」
「いや、だから、実際にジパンダルを見つけたんだよ。我がグランバーン王国の国王直属
「えええ~!」
マジか……。
『で、だな。ゼント! 君はグランバーン王国国民を代表して、ジパンダルの
グランバーン王はすごいことを言っている。
「すげえ!」
「ジパンダルかよ!」
「幻の国じゃなかったのか~!」
観衆はまた、ドオオッと盛り上がっている。
『ジパンダルには、恐ろしく強い
「が、
えーっと……俺は少し迷ったが、言った。
「い、行っちゃおうかな~……」
『というわけだ! ゼント・ラージェントは、ジパンダルへ行くぞ~!』
グランバーン王は観衆へ向かって叫んだ!
ドオオオオオッと、観衆は大盛り上がりだ。
俺は幻の国とされていた、ジパンダルへ行くことになった。俺は苦笑いしたが、とてもワクワクしていた。
◇ ◇ ◇
数ヶ月後……。俺は船の上にいた。周囲は海だ。
俺たちは、船旅に出ている。2ヶ月以上の長旅だ。周囲は海。向こうには島国が見える。
どこへの旅行かと言うと……あのジパンダルだ!
今回の旅行には、仲間たちがついてきてくれた。ミランダさん、エルサ、ローフェン、アシュリーたちだ。
例の
島国だというジパンダルの場所は、グランバーン王国から
王国民には、ジパンダルブームが起こっている。
(あれが、ジパンダルか)
俺たちは船の甲板の上で、ついに、ジパンダルという島国を見た。まず俺たちが、船の上から見たのは、素晴らしい、本当に美しい一つの山だった。
「うわああーっ! すっごーい! あの山、ゼントさん、見て!」
アシュリ―は俺の腕を
その美しい山の正式名は、「
「おー、すげぇ! これが
ローフェンが声を上げる。隣にはローフェンのアバラを看病してくれた、女性看護師さんがいる。付き合って1ヶ月らしい。
「結婚式は、このジパンダルであげようかなー。誰かさんと」
エルサは俺と並びながら言った。エルサの顔は真っ赤だ。
「ゼント君、ジパンダルの
ミランダさんが言った。
「素晴らしい
俺は深くうなずいた。どんな
俺は引きこもりだった。20年間も引きこもっていた。その時の俺と、今の俺は、中身はたいして変わっていない。グズで甘えん坊で、悩んでばっかりいる俺だ。
ただ、今は周囲に愛があふれていた。
【第一部 完】
20年引きこもった俺の最強武闘家ライフ~勇者パーティーから追放された俺、スキル【歴戦の武闘王】を手に入れ、掌底一発で悪党をKOします!~ 武志 @take10902
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