世界最強の勇者の生まれ変わりと言われた俺は、実は世界最弱で仲間が強いだけなんです

@THERDRIE

第1話

俺は生まれながらにして、はるか昔、魔王を封印した最強の勇者の生まれ変わりとして周りから重宝され、スポットを浴びながら生きてきた。そんな俺は今や16歳。旅に出る年ごろだ。


 そうして、俺は故郷を離れ、冒険者ギルドに向かうのだった。







 「はぁ、はぁ。」


村からえらく離れたところにある冒険者ギルドに、俺は来ていた。


 俺は入り口にノックをし、入る。


 すると冒険者であろう者たちが一斉に僕へと視線を向ける。だが俺はひるまずにカウンターまで行く。


「こんにちは。って、あなたはっ!!」


俺の顔を見るなり、受付の男性は慌てだし、連絡魔法で本店に連絡を取る。


「マスター。現れました。伝説の勇者です!!」


「なに!?いや待て。まず最初に相手の要望を聞こう。」


「了解しました。」


いや、会話が丸聞こえなんですけどね。すると受付の男性はこちらに向き直る。


「勇者様。今回はどのような用件で?」


「ああ。魔王を討伐するためにな。」


「魔、魔王を!?」


近頃、旧魔王城で何やら動きがあると騒ぎが起こっている。近くて一、二年。魔王が復活するとの予言もある。そして、それを不安に思う市民。そんな市民たちを救いたいと、だからこそ俺は動いた。


「ああ。そうだ。だけど、俺一人では心細い。それ故俺は仲間が欲しいんだ。頼めるか?」


「は、はい!!かしこまりました!!」


そういって、彼は大急ぎでスタッフルームへと駆け込むのだった。

 俺は、魔王なんて倒せない。あくまで市民を、不安から救うために動いたのだ。どうして俺は世界最強の勇者の生まれ変わりと言われたのだろう。わからない。本当は、『最弱』なのに。





 そうして、俺がしばらく待っていると、息切れを起こしながら、彼が戻って来た。


「大変お待たせしました。仲間が集まりました。」


「感謝する。」


「で、ですが、その。」


「なんだ?」


「その仲間とは、本店での合流となっておりまして。」


俺はハッ。と鼻で笑い飛ばしながら、


「問題ない。むしろ仲間を集めてくれただけでも感謝したい。」


「そ、そうですか。それでは、頑張ってくださいね!!」


「ああ。」


 そうして、俺は冒険者ギルドから出で行き、本店へと目指すのだった。


「きっと、野宿だよなぁ。俺、野宿したことないんだよなぁ。どうしよう。」


そう不安の声を漏らしながら。






 あれから数日が経過し、俺は冒険者ギルド本店に来ていた。冒険者ギルドの建物はほかの建物よりもよっぽど高く、いかに名をはせているかがうかがえる。


「さて、仲間と合流するか。」


そういって、俺はその建物へと入る。


「お待たせしておりました。勇者様。」


気品のある女性がこちらに向けてそう声をかけてきた。


「仲間は?」


「もちろん集まりましたとも。早く来てくれとマスターもおっしゃっております。」


「そうか。では、向かうとしよう。」


 俺はマスターの部屋へと足を運ばせるのだった。






 俺がマスターの部屋に訪れるなり、マスターは俺に手厚い歓迎をしてくれた。マスターといっても20代前半の年頃。よくもまぁその年でここまで成り上がったもんだ。


「いやぁ、さすがは勇者。パーティに加わりたいという依頼が殺到してましたよ。」


マスターはエッヘンと胸を張っていう。


「そして、そんな中から勇者様のお力になれるであろう者たちを集めてまいりました。」


マスターは手招きをする。すると、3人がその扉を開け、入ってきた。


「紹介します。右から魔法使いの『リン』。」


「よろしく。」


そういう彼女の顔はかわいらしく、その小柄なてで、俺に握手を求めてきた。


「こちらこそ。」


そういって、俺はその手を握った。


「僧侶の『レイ』。」


「よろしくのぉ。勇者様。」


「こちらこそ、お世話になります。」


そういって、そのしわだらけの顔を真剣に見つめ、その手をそっと握った。


「そして最後、戦士の『チェイン』。」


「あんたが勇者様かぁ。てっきりもっと強いともったんだがな。ちょっと予想外だが、よろしく。」


彼は俺の手を力強く握った。痛い。え、ちょっと。マジでいたい。


 彼の握手はやみ、心の中で痛みに悶えながらも俺は自己紹介をする。


「俺の名前は『ザードリ』。よろしく。」


 そうして、俺のパーティは結成され、魔王城へと向かうのだった。






 あれから俺たちは次の町へと向かっていた。


「待って。」


旅の道中、リンが右手を水平に広げる。


「どうした?」


そう俺は問うと、リンは冷静にこう言葉を返す。


「魔物よ。」


あ、魔物ね。いや、待てよ!!俺魔物と戦ったことなぇし!なんなら怖すぎて足動かないもん!!


「ここは、俺たちの出番かなぁ。」


「わしらの力を勇者様に見せる絶好のチャンスじゃな。」


「待ってよ、私も魅せたい!!」


そういって、張り切るみんな。戦闘狂かよ。まじで。そう思っていると、戦闘が始まるのだった。






 あれから3秒後、現れたスライムたちは一瞬にして炭と化していた。


「あぁ~。終わちまった。」


「ほんとじゃの。まあ、これはこれで準備運動になったわい。」


んなこと言ってるけど、あんたらが強すぎるだけね。っていうかこれ。


「俺いなくても、いいんじゃね?」


そう、小声で毒を吐くのだった。

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