異世界相談所

スロ男

異世界相談所

ジャーナリングRPG 博雅ver.

「異世界相談所」

https://kakuyomu.jp/works/16818093081649975575


サイコロ🎲はWEBサイコロ様を利用させていただきました。


https://www.web-dice.com


1. ティーンエイジャー

2. 向こう1年の生活に悩みがある

3. おすすめの料理屋で使える無料クーポンを渡す

4. 選択肢の中から、一つを選ぶ決心をしたようだ


おそらく、本来はひとつ書いてから、また振ったほうが意外性が出て面白いのかも。


とりあえず一発目ということでご容赦を。


*****


 異世界相談所の相談神官、というのが私の職業である。エルフのトラックに轢かれて日本から転生してきた私には「異世界」という響きにも違和感はないが、ネイティブ異世界人の彼等にとっては、どういうニュアンスで捉えられているのか定かではない。

 が、簡易な相談所として利用されており、評判は悪くない。精神科医なんてものはこの世界には存在しないし、身近な人に伝えられないような苦しい心情を手軽に吐露できる場所なんて限られている。懺悔室や告解室のようなものは用意されているが、宗派も様々だし、信仰する神様にこそ聞かれたくない、というような相談もあるだろう。

 我々は宗派人種人外を問わず、広く門戸を開けている。


 本日の相談者はまだ幼さの残るティーンエイジャーだった。日本とは違い、齢十三を超える頃ともなれば大人とみなされ、ギルドに属して働き始めるか、上級の学舎で魔術師や神官、騎士になるための勉学に励む頃合いだ。やってきた彼は、およそ貧しく、何かしらのギルドに属して一般職に就くことが定められているように見えた。


「どのような相談があって来られましたか。全ては(あなたの)神の御心のままに」

「問題は、そこなんです」

 若い相談者は、食い気味に声を発した。

「ぼ……わたしの家系は、神ではなく悪魔王を崇拝してきました。けど、それが、なんか違うんじゃないかなあ、って……」

「悪魔! あ、クマ、とかではなくて……? ウェンカムイとか」

「悪魔です。神官様が冗談で場を明るくしようとしているのはわかったんですが、正直よくわかりませんでした、ごめんなさい」

「あ、いや。スベっただけなのに謝られても……こちらこそ、ごめんなさい。こちらへ来てもう三十年になるというのに……」

「謝られても困ります。こちらとしては、キリッとした顔で神託のようにハッキリとした答えが欲しいんです」

「悪魔を崇拝してるのに……?」

「神託でなければ悪魔託でもいいです。というか、……私はこのまま悪魔崇拝を続けていていいのでしょうか?」

「疑問があるならやめればいいし、他にもっと信仰に値する神がいるならそちらに」

「ないんです、そんなもの!」

 若者はバンっと卓を叩いた。

「悪魔だから嫌だとか、他にもっといいのがあるんじゃないかとか、そういう話じゃないんです! ぼくはただ、目にも見えない、話もできない何かを崇拝するとか、その教えに従うとかが嫌なんです!」

「じゃあ、やっぱやめたらいいんじゃない?」

 バン!

「それができるなら、こんなよくわからないところに相談なんて来ませんっ! 間違っててもいい、これこれこうだからこうなんだ、と一つでもいいからいってくれる、身内でない誰かが必要なんです!」

 私は、しばし逡巡したあと、きっぱりといった。

「人が、自らが善神だと錯覚——こほん、信じている神様を純朴に信じるように、悪魔族の君は素直に悪魔を信じていいんじゃないの? どうせ神様なんてものも、絶望やら恐怖やらを直視しなくて済むように、人が作ったものなんだから」

「神を、人が作った……?」

「あ、ごめんごめん。こっちの世界だと神って実在してたんだっけ。ごめんね。でも、親から生まれた子だからって、親と心根をひとつにしなきゃいけないとか、従わなきゃいけないなんてものでもないはずだよ。そんなのは既得権益を守ろうとする輩か、自分が不幸に生きてきたんだから、おまえも不幸に生きるべきだ、みたいなケツの穴が小さい奴の言い草だから、気にしなくてよろしい」

「神官様って異端なんですね……」

「異端じゃなきゃ、こんな商売やってらんないよ」

 私が笑うと、釣られたように悪魔族のティーンエイジャーの少年は笑った。

「さて。せっかくここに来てくれた相談者の皆さんには、特典として近くの<鳩の首亭>の最初の一杯無料クーポンか、カカオザップギルドの一日体験クーポンを渡すことになってる。さあ、君はどちらを選ぶ?」

「そうですね、じゃあ一杯無料のほうを」

「どうでもいいことは、そうやって簡単にテキトーに決められるんだ。そうじゃないということは、簡単に決めなくていいこと。まあ、一杯飲みながら、テキトーに決めても、神の——ごほん、悪魔の御加護は案外あったりするんじゃないか、なんて私は思ったりするけどね」

「そうですね、そうしてみます」

「うん、それがいいよ」

「神官様みたいなテキトーな生き方でもなんとかなるんだと思ったら、少し気が楽になりました。もうちょっと考えてみます。元服を迎えるまで、まだ一年近くありますし」

「はは……また、なんかあったらどーぞ」

 私は力なく手を振り、昼飯を食いに行くべく、休憩中の木札を用意した。

 一杯無料クーポン、未成年でも使えたっけな……。

 

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