消えた友、あか落ちる墓

紬寧々

消えた友、あか落ちる墓

 ある日の昼下がり。

 俺たちは毎年恒例のお墓参りに来ていた。


「あいつが旅立ってから今日で1年か……」


「俺よりも先に行きやがって……。あっちの世界でも元気じゃねぇと許さねぇ」


「ツンデレ」


「うるせぇ」


 そっぽを向かれてしまった。言葉遣いは荒いが根は優しいやつなのだ。そんな彼は明後日の方を向いたまま、ぽつりと呟く。


「会いてぇなぁ。あと数十年はかかるだろうけどな」


「もしかしたら、すぐ会えるかも……」


「不吉なこと言うんじゃねぇよ!」


「あはははは」


 そんな和気藹々あいあいとしたやり取りをしているうちに、目的地に着いた。その場でしゃがみ、三人揃って手を合わせる。お墓を囲むもみじの木は赤いドレスを身にまとい、俺たちを温かく迎え入れるようだ。


「お前ら丁寧に掃除しろよ」


 そう促され、テキパキと手を動かす。


「今年から負担が大きくなるね」


「あいつが出所しちまったからなぁ」


「「はぁ……」」


 思わず出たため息は、舞い散るもみじの中に溶けていった。

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消えた友、あか落ちる墓 紬寧々 @nenetsumugi

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