ローグライク

ぽんぽん丸

ローグライク

スーパーの自動ドアは潔く開いて冷房の効いた空気を私の体に浴びせてくれた。


野菜コーナーでナスを手に取る。傷物が50%オフになっていた。マーボーが食べたくて買い物カゴに入れる。


腰の曲がったおばあさんが手押し車と合体したまま側まできた。割引されていないナスに下から手を伸ばして買い物カゴに入れた。


曲線を描きながらも90度に曲がった腰。顔は手押し車と同じ高さにあって視界が悪そうだった。


豚ひき肉には割引シールが見当たらなかった。仕方なく鶏ひき肉で我慢することにした。


恰幅のいい白い前掛けをした中年が、背の高い若者を叱っていた。2人は同じ服装なのだけど年季というのだろう、まったく違う格好に見えた。


作りすぎたじゃ許されないんだよ

すいません、申し訳ないです


若者は謝罪の言葉を2つ使った。クドクドと叱責は続いていて嫌な気持ちになった。たまごはまた今度にしてレジに向かった。


レジ袋を下げて歩いた。背後から小学生の声が連れ立って駆けてきた。立ち止まった私を追い越してずっと先まで行ってしまった。熱いアスファルトが陽炎を見せて黄色い帽子とランドセルはその中を揺らいで見えなくなってしまった。


玄関のドアを開けるとつけっぱなしの冷房が私におかえりと言ってくれた。


めんどうになって冷蔵庫にレジ袋を丸ごと入れた。甘い炭酸飲料だけを取り出してパソコンデスクに腰掛ける。


キャップを捻ると心地よい音が鳴る。変わらない美味しい味を渇いた喉に流し込む。


ESCキーを押すとポーズ画面が解除される。つけっぱなしのゲーム画面が動き出す。すでに12分経過したゲーム世界はおびただしい敵で溢れている。


AWSDキーで移動する。敵を倒すと経験値ジェムが落ちる。青い宝石のような見た目をしている。緑や赤は経験値が高い。


レベルアップした。新しい武器を選択する。鎌がキャラクターの周りを回転して敵をノックバックする。


14分経過した。敵はますます多くなる。


時計は進み続けた。

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ローグライク ぽんぽん丸 @mukuponpon

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