「頂き女子」りりちゃん氏のマニュアルから見える、悲しきマイノリティの私
加藤 良介
「頂き女子」りりちゃん氏のマニュアルから見える、悲しきマイノリティの私
皆様こんにちは。加藤良介でございます。
今回も周回遅れのネタを一つ。
タイトルにも書きましたが、頂き女子りりちゃん氏のマニュアルから見る悲しきマイノリティの私について書いていこうと思います。
いつも通り、頂き女子りりちゃん氏の概略や、彼女が起こした犯罪についての概要はすっ飛ばします。
ご存じない方は各自での情報収集を行ったうえで、お読みいただけると幸いです。
また、本エッセイにおいて犯罪を起こしたりりちゃん氏やその被害者についての正邪について、一切述べるつもりはございませんのでご了承ください。述べない理由については本編で。
それでは始まり始まり。
さて、皆様におかれましては、頂き女子りりちゃん氏をご存じでしょうか。
私、恥ずかしながら、つい最近まで全く知りませんでした。まさに絵にかいたような情弱。
( ̄▽ ̄)//SNSとか、やんねぇからなぁ。
彼女の事を知ったのは、詐欺事件の判決を取り扱ったニュースでした。
そして出会ってしまった。
彼女の書いた「頂き女子 完全マニュアル」に。
① 現代日本人において必読の一文
驚くべきはその完成度の高さです。
私は性別、年齢、社会的立場を問わず、現代日本人は必読の一文だと感じました。
本文において「おぢ」と呼称される標的から、いかにしてお金を巻き上げるかについて懇切丁寧に解説されております。
構成も完璧で、自身の境遇から読者のターゲッティング、マニュアルの趣旨、動機付け、売春との違い、自身のキャラ設定、ターゲットの分類及び選定、実践のためのテクニック集、フェードアウトの方法、結論に至るまで、全てが読みやすく論理的です。
マニュアルとしてだけではなく、エッセイとしても読みごたえ十分な内容です。
私はある種の敗北感すら覚えた。ここまで完成度の高いエッセイを書けたことが無いです。りりちゃん氏に敗北です。
物書きとして悔しい。(/ω\)
② 相克する要素から生まれる魅力
誤解を恐れずに断言いたしますが、りりちゃん氏は基本的に"バカ"です。
行いを振り返るにバカとしか言いようがありませんが、その能力の一部はとてつもなく優秀です。
例えるのであれば、バカ殿と優秀な家老が一つの脳内で同居している状態とでも言えばいいでしょうか。浅野内匠頭と大石倉之助の二人が、一つの人格に統合さている感じがいたします。
(/・ω・)/。例えがおっさん通り越して、もう爺さんなのよ。
ともかく彼女は、"バカと天才は紙一重"を見事に体現していると思います。
基本の方針はバカ殿が決定し、決定された目標に向かって忠実かつ優秀な家老が差配する。それがりりちゃん氏の犯罪行動です。
動機と結果から生まれる成果の運用に関しては"間抜け"の一言ですが、その為の目標設定、標的の分類と選択、実践に至っては、天才的ともいえるでしょう。
それが如実に表れているのが頂きマニュアルです。
バカと天才の混然一体。面白すぎです。
③ 使えるけど使えない
滅茶苦茶分かりやすく丁寧に書かれている「頂きアニュアル」ですが、一読しただけでもその実行難易度は明白です。
心理的障害もさることながら、実行のための必要スキルの難易度がアルティメット級です。
このマニュアルで求められているスキルが、人を見抜く見識だからです。
りりちゃん氏は、対象となる「おぢ」を、三つに分類しております。
①テイカーおぢ
②マッチャーおぢ
③ギバーおぢ
この中で頂きのターゲットとなるのが③のギバーおぢ。
ギバーおぢの特徴。本文まま
・独り身が多い
・全部自己責任の考え
・普通のサラリーマンが多い
・仕事にやりがいを感じてなくて、ただなんとなく生活のために出社している
・毎日仕事行って帰って寝るだけを繰り返している
・夢や希望がない
・お金の使い道がない
・自分にあまりお金をかける癖がない
・寂しいと感じている
・癒しを欲しがっている
・自分の話を聞いくれるような人が周りにあまりいない
・清潔感は一応ある
・ネット世界に興味無い(TwitterとかFacebookとか)
・モテたことがない
・恋愛経験が少ない
・熱中する趣味はない
・女の子への理想が低い
・気遣いをしてくれる
・こちら目線でいつも考えてくれる(待ち合わせ場所はそっちに合わせるよなど)
・無駄な誘いをしてこない
・一人でいることが多い
・一人暮らしの人が多い(実家暮らしでも頂いたことある)
・寂しいからLINE即レスで返してくる
①のテイカーおぢはこの反対の性質、②のマッチャーおぢは両者の中間の性質と捉えればよいでしょう。
頂くためには、ここ辺りを見抜かなくてはなりませんが、皆様、自信のほどはいかがでしょう?
とてもではありませんが、私には無理です。
この人間観察力よ。マジでレベル高いな。りりちゃん氏。
(。´・ω・)?。しっかし、ギバーおぢの"ギバー"の語源は何なのでしょうか。
私、気になります。もしかしてアキバか?
そして最後に、被害者への感謝。
感謝ですよ。感謝。それもまぁまぁ本心からの感謝。
りりちゃん氏はおぢへの嫌悪感を持っていますが、その大部分は①のテイカーおぢに向けられており、彼らはりりちゃん氏のターゲットではありません。
獲物はりりちゃん氏と属性の近いギバーおぢ。そのためか嫌悪感も低めです。だからこそ感謝できるのでしょう。本当に嫌いだったら感謝なんてしません。
りりちゃん氏以外の人がマニュアルを軽く読んだだけで「頂き」の実践は無理ぞな。本質をとらえて、しっかり読み込まにゃならん。
(´・ω・)//なんだかお経みたい。
④ マニュアルの注意点
非常に観察の行き届いた三つの分類ですが、注意点もあります。
この分類は、りりちゃん氏がこれまで出会ったおぢを分類したものです。
りりちゃん氏は20歳代と若く、人生経験が豊富という訳ではありません。あくまでも彼女の周りにいたおぢを分類したものなのです。
りりちゃん氏は風俗業を営んでいたらしいので、それ系の店に来る人ととの接点が主と思われます。そして、風俗店に頻繁に通う男性は少数派でしょう。
男性の大半を分類できる分類法ではないという事が注意点です。
私ならそんな金があったら、バイクにグリップヒーターをつける。
( ̄▽ ̄)//これで冬でも温かツーリング。
⑤ マニュアルの元ネタ
私はこのマニュアルを、りりちゃん氏が一人で考えたとは思いません。元ネタがあるはずです。
その元ネタがあるとすれば、りりちゃん氏が通い詰めたというホストクラブが可能性として高い。
ホストクラブのお客様への対処マニュアルが、元ネタと踏んでおります。
りりちゃん氏はこのマニュアルを、頂き女子向けにブラッシュアップしたと思われます。
この一事からも、彼女の能力の一片をうかがえるでしょう。
⑥ 社会への復讐
りりちゃん氏の行動は、自身を取り巻く社会への復讐の要素が含まれています。
おじさん世代への嫌悪感は本物でしょうし、それに対して一矢報いたいという気持ちも強い。
ただ、その矛先は強者へとは向かいません。
前述いたしましたが、りりちゃん氏の最大の敵は①のテイカーおぢです。本文中でも、し〇と表現するほど嫌悪感丸出しです。ですが、決してテイカーおぢに立ち向かったりは致しません。本当の敵とは戦わないんですよね。まぁ、怖いってのが最大の理由でしょう。
りりちゃん氏は反撃してこないギバーおぢをターゲットにしている為、社会への復讐性は低下いたします。
弱い獲物を狙うのはハンターの基本ですので、詐欺行為としては正解です。
彼女の犯行動機の一つに、金を溜め込むばかりで使わない社会風潮についての苛立ちがあります。
金は天下の回り物、使わなければ富が循環しないではないか。だからこそ私が派手に使ってやる。そんな感じです。なんだか古典的なリバタリアンってかんじてすね。この発想は恐らくホストからの入れ知恵だと思われます。と言いますか、飲み屋とかでオッサンが言ってそうな内容です。
あっ、もう一つの敵を忘れておりました。りりちゃん氏の敵は、彼女が入り浸っていたホストクラブとその経営者でしょう。
この詐欺事件の顛末は、ホストクラブの経営者の一人勝ちです。
客や従業員をパージして、自身を善意の第三者の立場に置く事に成功したからです。
( ̄▽ ̄)//笑いが止まらん。
⑦ マニュアルの歴史的資料性
本マニュアルは、史学における一次資料としての価値は一級品です。
歴オタの私といたしましては、この点を最大に評価しています。
100年後200年後に令和の研究をする人にとっては、最高の同時代資料でしょう。
このマニュアルは本屋に並んでいる出版物ではありません。社会的公平性を担保するための努力は一切行われていない、剥き出しのリアル。故に信頼に足り得る。それが例え社会のごく一面を切り取っただけのものでも貴重です。
また、史学だけではなく文化人類学、民俗学においても、この時代を知れる一級資料でしょう。
このマニュアル一本で、当時の若い女性がおじさんに持っている嫌悪感を如実に表していると思うからです。
私はこれから女性の男性嫌悪、男性の女性嫌悪の風潮は拡大していくと考えています。本マニュアルは、その過程を表す一級資料でしょう。少なくとも政府の少子化対策担当大臣は、絶対に目を通すべき文章です。
(´・ω・)。こいつ、何回一級資料って言うつもりだ。
⑧ 私の感想と世間とのずれ
さて、やっと本題にたどり着きました。
いつも通り回りくどくてすみません。前提条件を提示しないと死んじゃう病気なもんで。
一連のりりちゃん氏が巻き起こした騒動における、最大の不満点がここです。
ここまでつらつらと書き連ねてきた内容のようなことを、誰も考えてくれんのです。
ニュースやコラム、ブログに動画と色々と覗いてみましたが、私のような考察には行きつきませんでした。
岡田斗司夫氏の考察と、ギバーおぢはなろう系主人公にそっくりであるという論旨以外に、興味深いものはありませんでした。
この件に対しての大半の意見が、りりちゃん氏が悪い、いや、騙されたギバーおぢが悪いなどと言う、私からしてみれば、どうでもいい意見ばかり。
これだけ興味深い示唆に富んだ事件なのに、注目するところがそこかよと言う気分です。
事件だけ見れば昔からある結婚詐欺の亜種だろうがよ。そんなありふれた事象に注目してどうする。
この事件の最高の面白さは、このマニュアルに凝縮されています。それ以外はすべて枝葉で、私は一切の興味がありません。
でも、そんな風に考えるのは少数派(マイノリティ)なのでしょう。
家族や友人にも話したのですが、皆反応がいまいち。
(/ω\)。悲しいなぁ。
終わり
「頂き女子」りりちゃん氏のマニュアルから見える、悲しきマイノリティの私 加藤 良介 @sinkurea54
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