2-7
というわけで、一週間とちょっとが経過した今日。私たち三人は勉強会をしていた。
場所はとあるカラオケボックス。防音だけどやっぱり音は漏れる。部屋の前を通ると、その部屋の歌声が聞こえてくる。意図してあまり聞き耳は立てていないが、それでも聞こえてくるものは聞こえてくる。こればっかりは防ぎようがないので許して欲しい。
図書室とか、図書館とか、放課後の教室とか。とにかく選択肢は山のようにあったけど、カラオケボックスを選択した。理由は……特にない。あわよくば勉強そっちのけでカラオケしたりできるかも……とか思っていない。デンモクを持ったり、マイクを持ったりしているが、それはあくまでもカラオケボックスに来たから触っているだけであって、歌うつもりはない。せっかくお金払ってるんだから、触らなきゃ損だ。
学校が始まってから一週間とちょっとが経過しているということで授業もやった。たはだまだ片手で数えられる程度だが。なので、二年生で習う範囲はやらない。今目の前に広げられているワークは一年生の範囲である。
「一年生の復習……サインコサインタンジェント……なんだっけそれ」
「比を求めてどうするんですかね。大体で良くないですか」
戸村は問題そのものを否定し始めた。ダメだ、私も戸村もちゃんと馬鹿だった。助け舟に乗ったつもりだったが、ただの客船に乗っただけだった。
「比を求めて成績貰うんだよ」
「なるほど」
戸村は梨沙の言葉に納得していた。そんなんで良いのか。
真面目に勉強して、最後にご褒美として少しだけカラオケを楽しんだ。気持ち良く歌を歌っていたら、今日やった内容半分くらい飛んでいってしまった。数学は難しい。一生国語と社会科目だけを嗜みたい。
勉強会のおかげで梨沙と戸村の関係性もさほど悪くない。
勉強するのは本当に嫌だけど。ここの関係を構築するため、と思えば我慢できた。
時が進めば進むほど、突然ながら絶交のタイムリミットが迫ってくる。早いものでゴールデンウィークに突入していた。
ターニングポイントは五月十日。ゴールデンウィークがあけてすぐ。私と梨沙が絶交する日である。絶交する日ってなんだよ。
今更焦るがもう遅い。ただやれることはやったという自負もある。焦ってはいるが、パニックになってしまうほどの焦りはない。若干の余裕はある。
それに前回とはルートが思っきり変わっている。私と梨沙の間に戸村が入ってきたことで、見知らぬ展開が繰り広げられ、また知っている展開が訪れなかった。
正直、期待している。これはいけるだろう、と。慢心では……ないはず。
見知らぬ展開続きということは、五月十日のターニングポイントも見知らぬ展開になる可能性が高い。戸村が関わればそうなるのは確実になる。
これでもなお絶交するような展開が訪れるのであれば、運命力……の収束に驚く。
「そっか。私、まだやること残ってるな……」
あとは座して待つ。という気概で居たのだが、すべきことを思い出した。
撒ける布石は撒いておきたい。花咲かすかどうかはその時にならないとわからないけど。撒かなきゃ咲かせられるものも咲かせられない。パチンコは打たきなゃ当たらないし、スロットは回さなきゃ当たらないし、宝くじは買わなきゃ当たらない。それと同じ。ギャンブルしたことないけど。
とにかくやることやって待とう。きっと大丈夫だから。
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後悔するとやり直せる能力を使ってたら三角関係になってた こーぼーさつき @SirokawaYasen
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