しおりんとタイムカプセル

◆タイムカプセルの発見


 春の日差しが差し込む栞の家の庭で、栞と扇華は思い出話に花を咲かせていました。ふと、扇華が昔のことを思い出します。


「ねぇ、しおりん。私たち、子供の頃にタイムカプセルを埋めたことがあったよね?」


 栞も懐かしそうに微笑みました。


「そういえば、そうだったね。確か、庭のどこかに埋めたんだっけ?」


 二人で庭を探し回ると、大きな木の下から、地面から少し顔を出している錆びた金属の箱を見つけました。


「これだ! 見つけた!」


 栞が嬉しそうに叫びます。二人で協力して箱を掘り出すと、side面に「タイムカプセル」と書かれているのが見えました。


「もう10年以上前に埋めたんだよね。こんな日が来るなんて、あの頃は想像もしていなかった」


 扇華が感慨深げに呟きます。錆びついた箱を開けるのに少し手こずりましたが、なんとか蓋を開けることに成功します。中には、少し黄ばんだ紙と、小さな宝物がいくつか入っていました。


「私たちが未来の自分に宛てた手紙だ!」


 栞が感動した面持ちで手紙を取り出すと、扇華も目を輝かせます。


「こんなに大切な思い出が、ずっとここにあったんだね」


 二人は縁側に腰掛け、タイムカプセルの中身を丁寧に取り出しました。子供の頃の宝物を手に取り、思い出に浸ります。そして、未来の自分宛ての手紙を、大切そうに広げるのでした。


◆過去からのメッセージ


 少し緊張した面持ちで、栞と扇華は子供の頃の自分が書いた手紙を読み始めました。最初に目に留まったのは、稚拙な字で書かれた「未来の科学への予想」というタイトルでした。


「20XX年の科学技術は、きっとすごいことになっているだろうな。ロボットが家事をしてくれたり、瞬間移動ができるようになったりしているかも……」


 子供ながらに夢見ていた未来の姿に、二人は微笑ましさを感じずにはいられません。


「ロボットはまだ家事をするほど賢くないけど、VRで仮想的な瞬間移動はできるようになったね」


 栞が現代の技術と照らし合わせながら呟きます。扇華も頷きつつ、手紙を読み進めました。


「でも、一番すごいのは、未来の私たちだと思う。きっと、今よりもっと頭が良くなって、難しい問題も解決できるようになっているはず」


 子供の頃の自分が抱いていた期待に、二人は胸を熱くします。今の自分たちを見たら、子供の頃の自分はどう思うだろう。そんなことを考えながら、手紙を読み終えました。


「過去の自分は、今の私たちを信じてくれていたんだね……」


 扇華が感慨深げに呟くと、栞も力強く頷きます。


「うん。だから、その期待に応えられるように、これからも頑張らないとね」


 二人は手紙を大切にしまい、タイムカプセルに目を向けました。中には、子供の頃に好きだったおもちゃや、思い出の品々が入っています。一つ一つの思い出が、鮮明によみがえってきます。


「こうして過去を振り返ると、今の自分がどれだけ成長できたのかが分かるね」


 栞が感慨深げに呟くと、扇華も優しい笑顔を浮かべます。


「そうだね。でも、これからもっと成長していけるはずだよ」


 過去からのメッセージを胸に、二人は新たな決意を固めるのでした。子供の頃に想像した未来を超えるような、素晴らしい大人になるために、これからも前を向いて歩んでいこうと。


◆未来への決意


 タイムカプセルの品々を丁寧にしまい、栞と扇華は庭をゆっくりと歩いていました。二人の心には、不思議な高揚感が満ちています。過去の自分と対話し、今の自分を見つめ直す機会を得たことで、新たな気持ちが芽生えていたのです。


「ねぇ、しおりん。私たち、これから何を目指して生きていこうか」


 扇華が大きな木を見上げながら、ふと呟きます。栞は少し考え込むように歩みを止めました。


「うーん……子供の頃に想像した未来を超えるような、素晴らしい大人になりたいな」


 栞の言葉に、扇華が優しく微笑みます。


「そうだね。難しい問題も解決できる、賢くて思いやりのある大人になりたい」


 二人は互いの目を見つめ、力強く頷き合いました。この日のタイムカプセルの発見は、未来への新たな一歩を踏み出すきっかけになったのです。


「まずは目の前のことに全力を尽くそう。夢に向かって、着実に」


 栞が微笑むと、扇華も嬉しそうに頷きます。


「そうだね。支え合いながら、一緒に成長していこう」


 春の日差しを浴びながら、二人は新たな決意を胸に歩み始めました。子供の頃に埋めたタイムカプセルは、過去と現在、そして未来をつなぐ、かけがえのない宝物だったのです。


 これからの人生で、どんな困難が待ち受けているのか、まだ分かりません。それでも、過去の自分からの応援の言葉と、親友との絆があれば、どんな課題にも立ち向かっていける。そう信じて、栞と扇華は未来への一歩を踏み出すのでした。


「10年後用に、また新しいタイムカプセルを埋めようか」


 扇華が楽しそうに提案すると、栞も目を輝かせます。


「うん、そうだね!」


 遠い未来に思いを馳せながら、二人は笑顔で家路につきました。今日の出来事は、二人の人生の中で、いつまでも輝き続ける思い出になるでしょう。過去、現在、未来をつなぐ、かけがえのないタイムカプセルとして。

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天才ひきこもり少女・栞の日常 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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