第5話 犬
牢屋の鍵を受け取った。
俺に反抗しなかったヤツらはとりあえず好きに動かしているが、多くの奴らは庭園でぼけーっとしている。
そのとき、やっと王国本土から宰相が騎士団を引連れてやってきた。
「後のことは任せたよ宰相」
「え?そもそも今どういう状況なんです?」
「自分で考えてくれ」
「ちょ、ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ?!!!」
俺はシルヴァリアを連れて王城の中へ戻った。
ぶっちゃけ反乱とかはないと思うけと、仮にされても宰相がなんとかしてくれるだろう。
最悪俺が反乱分子を全員消し飛ばせばいいだけだし。
そのへんは特に気にしてはないんだけど。
「……」
俺の横にいるシルヴァリアは言葉にはしないけど、ずっと睨むような目をしていた。
俺としても口には出さないけど王族にはなるべく手を出したくないという気持ちがあるので、どうにかして距離を詰めたいが。
どうしたものか。
(美味いものでも食べさせてみるか?)
美味いもの食べたらこの子も少しくらいは気をよくしてくれるんじゃないだろうか?
(なんか、食べさせてみるか)
そういうわけで俺はシルヴァリアに目を向けた。
「厨房に案内して欲しいんだが」
「なぜ?」
「腹でも減らないか?俺は腹が減ってきたしなんか口にしたい」
「それならこっちだけど」
シルヴァリアは俺を先導してくれる。
そのまま厨房までついた。
「材料は好きに使っていいよな?」
「いいけど、あんまり無駄遣いしたりしないで」
俺はさっそく材料の準備に取り掛かることにした。
特に作るものは考えていないので、材料を見ながら作るものを考えることにした。
とりあえず冷蔵庫とか冷凍庫とか見てみるか。
(アイスか)
アイスが見つかった。
それから冷蔵庫を開けるとミルクを見つけた。
(シェイクでも作ってみるか)
原作ではアイスがおいしいみたいな話は聞いたことあるけ、シェイクがあるとかは聞いたことがないな。
ということは、シルヴァリアも飲んだこと無いはずだ。
そんなものを俺が作ってみる飲ませてやれば意外といけるのでは?
(シェイクでも作ろうか)
というわけで、コップにアイスとミルクをいれてスプーンで混ぜることにした。
これだけで意外とそれっぽいのは作れたりする。
「何作ってるの?」
不思議そうな目をしていたシルヴァリア。
「シェイクってやつ」
よし、それっぽいのができた。
というわけでコップをシルヴァリアに渡した。
「なに、これ?ミルク?」
俺の思った通りやはり見たことがないらしい。
「アイス?」
「飲んでみるといいよ」
「アイスなんて普通飲めないよね?」
「それが飲めるんだよ」
怪訝な顔。
それでもシルヴァリアは好奇心に負けたのか、コップを口に近付けた。
グイッとコップを傾けると……。
「っ!?」
すっごいビックリしたような顔。
コップを口から外して俺を見ていた。
「おいしぃ」
「でしょ?」
「全部飲んでもいいの?」
「いいよ」
俺がそう答えるといっしゅんにしてシルヴァリアはシェイクを飲み干した。
「ぷはーっ」
コップを近くの机に置いた。
満足そうな顔。
「すっごい、おいしかった」
それから少しだけ恥ずかしそうな顔をした。
「あなた、名前なんだっけ?」
「オルクス」
「私の事、リアって呼んでもいいよ」
そうやって呼べるようになるまで長くなりそうだなぁって思ってたけど意外と早かったな。
「あなた根は悪い人じゃなさそうだし。でもどうしてこの国を攻めてきたの?」
俺としてもリアは悪い子ではなさそうな気がしたのでとりあえず経緯は話しておこうか。
タクトを殺してからここまでのことをほんの軽く説明。
「そんなことがあったの?ごめんなさい」
逆に謝ってきた。
「タクト兄さんがあなたから婚約者を奪おうとしてたの?それはだめだよ」
この国に来てから初めてマトモな人を見た気がする。
俺も謝っておくか?
タクト殺しの件。
「俺こそ悪かったね。逆上して殺してしまって」
「いいんだよ。この国では不倫とかは罪が重いよ。兄さんだって死ぬことくらい覚悟してたはず」
怖いなぁ。
この国。
そんなに不倫って重いんだ。
「うーん」
リアはそこで腕を組んで悩んでた。
何を悩んでるのだろう?
「うん。きめた」
「なにを?」
「私あなたに尻尾振ることにする」
どういうことだろう?
リアが犬みたいなポーズをしてた。
「戦争には負けちゃったし、引き金引いちゃったのはこっちっぽいし、私はあなたの味方するから、なんでも言って」
そう言ってにっこりと笑うリアだった。
「隙があれば殺そうかなって思ってたけどやめる。私はあなたの忠犬になるよ」
こうして、俺はリアという名の忠犬を手に入れることに成功したのだった。
【悲報】NTRエロゲの主人公に転生した俺、初手で悪役王子をぶっ殺してしまう にこん @nicon
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