掛け持ちという綱渡り

「来週から合唱コンクール?」


「そう、出場するのよ。・・・あれ?知らなかった?」


「もちろん知ってますけど」


何かホワイトボードには大会とか書かれていた。


でも頭の中は吹奏楽コンクールでいっぱいだったし、気にもしてなかった。


「2つあるコンクールのうち最初のが、某新聞社主催の全国規模の合唱コンクールね。 それから、Nコンて言うのは、某公共放送主催の合唱コンクールの事でこっちは何と参加費無料なのよ!」


「無料!」

なんと太っ腹!


因みに、どちらも全国大会まである。

だから週2で合唱の練習をしていたんだけど・・・。


「ほら、うちって吹奏楽部だけど、合唱部でもあるから」


「そうなんですよね」

・・・でもさ


「その結果、7月末に吹奏楽コンクールで、8月初めに合唱コンクールにNコンになったと」


「ほら、うちの顧問イベント好きだから」


部長が必死に説明するけど


「・・・頑張ります」


「うん、ふぁいおー」


・・・もうやだこの部活

*


それから数週間後


「やったぁ、九州大会の推薦取れたよ!」


「通ったね!」

そして、


「合唱コンクールも通ったよ!」



「あ、やったぁ?」


出良いよね。


「あのう・・・Nコンも通ったね」


「・・・」


・・・どうしましょう


*


「当初はどっちか通ればいいかなって思ってたんだけど」


顧問の先生は目が泳いでた。

まさかの全予選突破。


「・・・で、どうするんですか先生」


「どうしましょう」


「まあ遠征費用は、先生の貯金くずせばいいとして」


「やめてよ!私の結婚資金なのよ!」


「相手いないでしょ」


あ、それは言ったら


「あーら泣いちゃったよ」


しくしく涙を流す顧問。


「すみません」


全力で反省してます。


*


「早く全国に行きたいね。先生の代は行ったことなかったからさ」


「はい、私も楽しみです」


「それじゃあ、頑張ってみますか」


「そうと決まれば、練習頑張るわよ」


「はい!」



こうして私たちの夏休みは、部活一色が決定した。


「・・・そう言えばみんな宿題やってるよね」


「何か言った?」


ハイライトが消えた瞳でそう聞き返された。


「ううん、なんでもない」



不安だけど。





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前世で吹奏楽部だった俺は、TSしてもやっぱり吹部だった。日常は変わらず淡々と過ぎてく 水都suito5656 @suito5656

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