本作は、定番ながら奥深いテーマを、学園ドラマとして非常に丁寧に描き切った青春物語です。
主人公・佐藤翼は『ごく普通の男子高校生』という等身大の立ち位置にあり、だからこそ突如として女性の身体になってしまう展開が、読者に強い共感を与えてくれます。
物語の大きな魅力は、身体の変化に伴う戸惑いや不安、価値観の揺らぎを真正面から描いている点。
制服、更衣室、お風呂といった日常の些細な場面が、翼にとっては試練となり、読者にも『自分だったらどうするだろう』と考えさせるリアリティがあります。
微笑ましくて、少し胸が締めつけられて――それでも前を向きたくなる。
そんな読後感を与えてくれる一作です。
男子高校生の翼は、科学部の理子先輩が行った実験の事故で女性になってしまった。
理子先輩に助けられ、クラスメート達にも受け入れられ、万事うまくいっている、ように見えたが……。
誰もが経験しているように、どんな性別であろうとも、それゆえの苦労はある。
本作はフィクションだが、翼が女性ゆえに苦しむシーンは、こちらにも苦しみが伝わってくるほどリアリティがある。
その一方で、おしゃれやメイクといった、女性になったことで新たに知った幸せを楽しむ翼は輝きに満ちている。それもまた本作の魅力だ。
理子先輩は、翼が男性に戻れるよう懸命に努力するが、翼は、女性であることにも魅力を感じ、悩む。
果たして、翼はどう生きる道を選ぶのか。
それはぜひ、あなた自身で見届けてほしい。
まずは作者様へ、完結おめでとうございます。
御作は女体ならではの繊細な感覚、乙女心のやわらかな感受性、それらが詳細に描かれている傑作だと個人的には思います。
主人公が変化していく身体に戸惑いながらも、生じてくる乙女心を周囲の人たちのサポートもありながら受け止めて行って、その過程をとても丁寧に描かれていて読みごたえがありました。
ともすれば「現実離れしすぎて入り込めない設定」になりがちなところ、人物の心理描写やストーリー展開が丁寧なことで共感し、主人公の翼がメイクやおしゃれなどを楽しむシシーンで一緒に幸福感が味わえました。
途中つらい体験もありましたが、それを乗り越えることで決断し手に入れた幸福に感銘を受けました。
読んでよかったと思える素敵な物語です。