さて、次は決まったけど
「推薦された学校の顧問はステージ裏まで集まってください」
そんなアナウンスが流れる中、私達は通路の人を避けロビーへと出た。
「何この人だかり」
自分もその一人だというのに、眼の前に広がる景色に私は辟易した。
ロビー中が中学生で溢れてた。
見たこともない制服の子もいれば、ステージ衣装を来た子もいてとても華やかだ。
「いやー緊張した」
先輩でもやっぱり緊張するんだ。
「おい、私を何だと思っているの」
「えー。完璧超人?」
軽くこづかれたけど、たしかにこの緊張感は慣れるものではないのだろう。
「よし、出よっか」
「いたた、座りすぎてお尻が痛い」
「何やってんのよ」
客席からドアをくぐり下玄関に出てもその光景は変わらなかった。
そこには溢れんばかりの人だかりだ。
父兄や卒業した先輩からのおめでとうの声。応援に来てくれた同級生。
「皆んなー集まって!」
部長が声を上げる。
その声に私達はぞろぞろと自販機側の空きスペースに皆んなが集まる。
「今日はお疲れ様でした。今夜はゆっくりと休んでください。それから今日まで私達の事を応援して下さった家族や大人の人たち、先生や顧問の先生にお礼をいいましょう」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
ちょっと恥ずかしかったけど、きちんと言えてよかった。
「記念撮影に入りまーす。階段に並んでくださーい」
写真係の父兄の声に整列する。
「あれって咲ちゃんのお母さんだよね。めっちゃ美人じゃない」
「あはは。そうかな」
「そうだよ!」
「うーん」
外面が良いだけのような気もするけど。
声だっていつもよりだいぶ高いし
記念写真を撮り終われば、いよいよ解散だ。
車で来てくれた子はそのまま家族と帰宅。
他の子は荷物と一緒に学校へと帰る。
「点呼済みました!」
「それじゃあ、帰るわよ」
こうして私達の長い一日は終わった。
てっきりバスの中では色々話すんだろうと思ってたけど、みんな早々に眠りに落ちた。
バスに揺られ心地よい眠りの中、私もその中のひとりとなった。
半分夢の中、私は舞台の上でトランペットを吹いていた。
ひな壇の最上部から見た会場はとても素敵だった。
「なんか夢がかなった気がする」
何の夢か全然思い出せないけど、たしかに私は幸せを感じていた。
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