何とか代表に・・・なれた?

プログラム順に次々賞が発表される。

中学生だからなのか、ほとんどの学校は銀賞だった。

それでも、たまにゴールド金賞の声に思わずどきりとする。


「大丈夫、金に数量制限無いから」


「はい」


先輩は皆んな上手だった。きっと大丈夫。


そうして私の初めてのコンクールは見事ゴールド金賞だった。




「なんで・・そんなに平気なのよ」


「うーん、そう言われても。一応毎年のことだし」


私にとっては初め手の金賞でも、先輩たちにとっては一つの通過点だった。

きっと努力をしてきた自信もあるんだろう。


「確かに先輩たちは余裕ありましたもんね」


「あはは。実はそうでもなかったんだよ」


私につられて隣の子まで泣いたけど、さすが慣れているのか先輩たちは自然体だった。

私は強豪校に入ったんだと、その時あらためて実感した。



「あーあ、恥ずかしかった。私ひとり泣いて恥ずかしいじゃん」


「純朴でいいじゃん。ほーら、こっち向いて」


「いや、自分で出来るよ」


「いいから、いいから」


無理やりタオルでゴシゴシやられる。


「ありがとうございます」


「ふふっ、どういたしまして」



全ての学校の賞の発表が終わり、次はいよいよ選出校だ。

私はぎゅって隣の子と手を繋いだ。


「緊張するよー」


「大丈夫だよ。皆んな頑張ったもん」


目を閉じて俯き、ただアナウンスに耳を傾ける。




時が止まった。


「九州大会への推薦団体は・・プログラム番号15番。市立南中学校」


「きゃああああああ!」


一瞬で皆んなの声が爆発した!

あんなに冷静だった先輩たちも立ち上がって喜んでいる。


え、やったの?


「私達九州に行けるんだよ!」

「県代表になれたんだ」


そんな先輩たちの姿を見て、

「うえええうれしいいいいよおおおお」

「あ、この子はまた泣いて」

「ぜんぱいもないてるじゃないでずが」

「先輩だからいいのよお。うええ」


こうして

まだまだ私達の夏は続きそうだった。



部長が賞状とトロフィーを受け取り、客席へ深々とお辞儀をする。

目には涙が浮かんでいた。

会場からたくさんの拍手が聞こえる。


私も拍手をした。


こんなにキラキラした中学校生活が来るなんて、想像もしてなかった。

姉に言われいやいや入ったけど、すでに私は吹奏楽の沼にハマっていた。




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